第27章 飢えて枯れてなくなった
「ほいよ、姫さん」
『妾にさん付けなどするでない』
「姫ちゃん?」
『…まあいいんじゃないかの』
向けられるスプーンにぱく、と食いつけば、そこに乗っていたものを私の口に残すように引き抜かれる。
…こういう風にお世話されている感覚は嫌いじゃない。
「嬉しそう……姫ちゃん、ボクにもあーんさせ『却下。下心と煩悩が滲み出てるから嫌』手厳しい姫ちゃん大好きっす…!!」
「俺にはそういうのが無いと思ってんのか?お前」
『中也さんからは常時受け付けておりますゆえ…』
「あー…変なスイッチ入った?えらく甘えたんなってんぞ」
ぽんぽん、と撫でられただけでも霊子が舞う、舞う。
「えええっ、何!?蝶々いっぱい舞いすぎじゃない!!?」
「真紅だし!!めっちゃ紅いし!!!」
タイミングよく居合わせたクラスの面々も動揺する。
「あらら、懐いてるわんこが振ってる尻尾なみに振ってますねあの触角」
「あんたが付けた感情モニタだろ」
「そうとも言います、可愛いでしょ♡」
「確かに感情表現苦手だったけど…今いるか?あれ…」
喜助と捩摺の会話もよく聞こえないままに中也の方を見つめ続ける。
ああ、そう、この感覚。
こういうスキンシップを求めてた。
『中也さん中也さん、妾も食べさせ____』
しかし、そこで途端に現れる穿界門。
それをいち早く察知して、一瞬で紅姫の人格を閉じ込める。
すると見た目も元に戻り、黒い色素はどこへやら…
「___よっ、戻ってきた…はええけどここどこや?」
『空気読めないなら死ね、バカ真子』
「戻ってきて一言目がそれかい!!?」
『中也さんにも食べさせてあげるの…♡』
「って聞けやお前!!!」
唐突に姿の戻った私に思考が停止したような周りの面々。
そして、苦笑いを浮かべる喜助さんと捩摺。
こればっかりは仕方がない。
尸魂界と関わりのある者には、知られないよう努めるのが掟だ。
「…へえ、俺に食わせてくれんの?じゃあ口移しがいいなぁ」
『…あ、アイスよ?…クリーム、とか…の、口移し…、?』
「そうだな、それと一緒にフルーツも食わせてくれよ」
『ぁ、…っ、は、はいぃ…ッ♡』
「「「「どんな羞恥プレイさせてんだよあんた!!!!!!」」」」
真子に無理矢理引き剥がされて、事なきを得させられた。
「あ?日常だよこんなもん」