第27章 飢えて枯れてなくなった
「んで?どこに連れてけばいい?」
ガタイのいい背中に背負われながら、山を下っていく。
『先に磯貝君とこ行くの。妾パフェ食べたい』
「一応聞くけど浦原さんの誕生日なんだよな?」
『あそこ行ったら妾を唸らせるものが揃っておるから喜助など簡単に居座るわ』
「紅姫さん主人に容赦ねぇな…」
主と呼べ、主と。
妾の主人は其方だけじゃ。
言ってるうちにも、体の方に影響が出始めて、久しぶりの感覚に少し気がまた緩む。
斬魄刀本来の性が表に出始めたから、本来あるべき装いへと促されていく。
まあ、たまには悪くない。
喜助に色々と着るものを変えられていたせいで執着など全くもってなかったのだが。
「…、?なんか、変な感触…が、…?」
肩出しの着物を腹部の大きな帯でとめ、淡い色の羽衣を纏い…髪の色が変わる。
『……何かおかしいか』
「………、い、や…お前、それ…」
「ああ、本性出しすぎて戻っちゃったんスね?…正真正銘、ボクの紅姫ちゃんその人ッスよ」
『誰が其方の紅姫だ、妾は中也のものである、勘違いするでないこの放置魔め』
「散々な言われようッスね!?…姫ちゃん、ボク今日誕生日……」
『…仕方がないから相手くらいはしてやらんでもない』
「それ今と何が違うの姫ちゃん?」
喜助をからかうのも楽しいものだ、こっちになってしまえばもう此奴は逆らえん。
…問題は、中也が受け入れるかどうかなのだが。
『どうした、人間。黒髪は嫌いか』
「!いや、嫌いっつうよりびっくりして…黒髪ってのもいいもんだな。それに…」
『え…、ッわ!!?ちょっ、な、何…ッ』
唐突に顔を近付けられて、ほぼゼロ距離で見つめるその瞳に捕えられる。
そんなに見られるのは慣れてないから恥ずかしいのに…またこの人はこういうことを。
「……俺と同じ色の目だ」
『…ぁ、……っ…う、ん…一緒…』
「なんで泣くんだよそこで!!!?」
気付いてくれた。
永かった、ここまで。
『中也と一緒に戻れた…ッ』
「…姫ちゃんもしかして一回も本性出したこと無かったの?」
『だ、だって…ッ、ただで、さえあんな見た目なのに…っ…いきなり、こんな変わったらもっと気持ち悪いでしょう…ッ、?』
「なんだ、目まで気にしてたのかよ…あーよしよし、もう好きなだけその格好でいていいから。……めっちゃ好みだわお前…」