第27章 飢えて枯れてなくなった
「蝶さんよ、お楽しみのところ悪いんだが…そろそろ血液供給のお時間ですぜ?手前意識ぶっ飛ばしてっから出来もしなかったし…逃げねぇよなぁ?」
中也の突然すぎる割り込みにピシ、と固まる。
…待て、今この人なんて言った?
『え、…今?』
「今だ。どうせお前今動けねえだろ」
『せ、せめて壁張「回復したのが台無しになるから却下」い、いいいいまは余裕あるから調整できる!!!!』
「…少しでも力使ったらその場で壁ぶち壊して襲うからな」
何か聞こえた。
ていうか待って、なんかこの人今すごい口が悪くなってる気が…
慎重に、ちゃんと集中して、あらかじめ消滅の能力を施してから迷彩壁を張る。
すると中也が私に覆いかぶさってきて、紅い蝶から血液を手に出し、それを舐め取って私に口付ける。
処置をするということが分かっていたために唇を開ければ、すぐに舌同士がくっつけられて血液が流れていく。
『…、ン……、ん…』
いつまで経っても恥ずかしそうに目を瞑ったままそうする蝶にまた愛しくなって、ゆっくりと唇を離せば名残惜しそうな目で彼女は俺の目を見つめてきた。
『……、おし、まい…?』
「…これ以上してたらマジで襲いかねないから今日は我慢」
なんて言いつつ抱きしめていては世話ないのだが。
『…、久しぶりだ、ぁ……中也さん…』
「…妬かねえわけあるかよ、阿呆。いっぱいいっぱいだっつの…けど俺がそんな素振り見せてたらお前、甘えにくいだろ」
『そ、だね…で、も私…器用じゃ、ないから……分かんないの、どうしたらいいかとか…っ』
「…さっきみたいにわがまま言えばいいんだよ、いつでも。…ただ、それで溜め込んで自分の何かを犠牲にすんのはもう無しだ。先に俺に言ってみること……お前が心配してることなら、俺はなんとでもしてやれるから」
何度もぽんぽん、と手で柔らかく撫でられるうちに、私の心の底まで全て見て、本気でそう言ってるんじゃないかと思ってしまう。
…いつだって本気だ、この人は。
「……打ったところのツケは、今日のスイーツ巡りに同行することで許してもらえるか?」
『ついてこないつもりだったんだ…うん、いいよ』
「…、…刺した、分は…俺の、生涯捧げるから……、捧げさせて、くれないか…」
『…うん』
私に散々ボロボロにされてるのに。
やっぱり、男の人なんだなぁ…