第27章 飢えて枯れてなくなった
『…手、離れない。勇音さん、私の右手がおかしい』
「…離したいんですか?その右手」
『……ううん』
「!…それなら大丈夫、ちゃんと機能してる証拠です」
優しい声色でそう言って、勇音さんは私の霊力増幅をそこで終了する。
目を見開いて呆然とする中也をよそに、自分の右手を見つめ続けた。
…離さなかったんだ、私が。
離れなかったんだ…振りほどかなかったんだ。
離されるのは慣れてるのに。
目が覚めてそこに誰もいないなんて、私にはぴったりだったのに。
「虎徹さん、ありがとうございます。こちらの世界での回復は中々厳しかったでしょう…?」
「そうですね、何せ自分の霊力がなくなったら終わりですし…浦原さんの霊力マスクがなきゃ多分先に自分がやられてました。……澪さん、本当にこんな世界で二重詠唱と九十番台の鬼道なんて…?」
喜助さんの声も聞こえてきて、段々と聴覚が戻ってくる。
よく聞けば殺せんせーや真子の声も聞こえて、そしてもう一人、そこには捩摺の声もあった。
そちらに顔を向ければ一瞬で目が合って、目を丸くする。
『…捩摺、戻ったんじゃなかったの?……なんで、まだいるの?』
「!阿呆か、お前起きてから俺がいなかったら寂しがりこじらせ過ぎて泣けもしねぇくせに…ごめんな、一向に俺のこと離そうとしないから、無理矢理力の供給は断ち切らせてもらった」
『……ねえ、やっぱりやめたら?その見た目…その下睫毛だけは見習わない方がいいと思うなぁ』
「だってお前、この下睫毛伸ばさねぇと絶対俺甘えようとしねえだろ?」
『捩摺が私のこと甘やかすとか五千年早いわ』
リアルな年数出してんじゃねえよ、といつぞやに聞いたように突っ込まれる。
ああ、でもそういうことか。
元々あの人の斬魄刀の双子のような存在だったけれど…そりゃあ似てるはずよね。
『……、死覇装と副腕章が無いからダメね、五点』
「はああ!?んなもん無理に決まっ…、は?えっ、お前今五点っつった?零点じゃねえの!?五点!!?」
『何、零点がいいの?』
「いやいやいや!!?……すげぇ機嫌いいのな今日?」
五点で喜ぶのか、五点で。
『…別に。捩摺と違って中也さんは常に百点だし』
「そうなのか?照れるな」
『ごめんなさい千点にします』
「わっかりやすいなお前!!?…俺は?『零点』なんでやねん、落差ありすぎやろ!!」