第26章 帰郷
『私の体質をどうにかしようって狂気に染まった人間も死んだ…私に良くした人達を何人も何人も殺した後にッ…、…独りだった私の面倒を見てくれた人だっていなくなってた!!私が何も干渉出来なかった間に!知らないうちに!!』
「蝶…、お前…」
『織田作がいなくなったのだって、私が不幸者だったからじゃない…ッ!!何も返せない内に、私がいないところで!!…っ分かる!!?私に関わってもろくな事なんか無いの!!!私が我慢しなくちゃいったい誰が私のことこれ以上苦しくさせずにいてくれるのよ!!!!』
言いきった…本人に向けて、吐き出した。
死んじゃ嫌…だから核を移すまでに至った。
いなくなっちゃ嫌…だから、無いはずの籍を入れたことにして、結婚だなんて形でふわふわとした楔でつなぎ止めた。
それが今度は、執着してくれなくちゃ嫌ですって…不自由なくらいが丁度いいんですって。
だからダメなのよ、私に愛情なんて与えちゃ。
私がどれだけ我慢してきたと思ってるの…私がどれだけ掴めなかったものだと思ってるの。
いつもその答えをもってる人達は、私を置いていってしまう。
いつもそういう人達は、私のために死んでしまう。
私のために、不幸になる。
なのに私は、今生きてるこの人に…散々迷惑をかけてかけて、またかけようとするこの人に、まだ執着する。
まだ足りないと、こんなに自由にしないでくれと。
自由すぎるのも苦しいの、他のところに行くのも苦しいの。
見てもらえないだけで苦しいの、同じ以上に求められていないと、不安で不安で仕方がないの。
なのに私はとことん縁も幸も薄いから。
そこまで強請った相手は…信頼した相手は、尽く私の前から姿を消していく。
色々な形でいなくなる…そしてたったひとつ、不幸と言える形でいなくなる。
『……わかった?…いい機会だからもっかい聞いといてあげる…ねえ、やめときなさいよこんな奴。……離れるなら早いうちをお勧めするわ…大丈夫、心配しなくても私には捩摺がついてるもの』
「……お前が浦原さんと似てねえのはそこだな。…大丈夫って言葉が、お前とあの人とじゃ意味が全然違う」
『…何、いきなり…嫌がらせ?いいよ、好きなだけ言って…私も散々言っ「好きだよ蝶…愛してる」…まだ言うの』
「いくらでも言うさ、最近あまり言ってやれてなかったもんな。…誰が離してやるか、馬鹿が」