第26章 帰郷
「俺にその槍で切りつけることだってできるだろ。なんなら最初に突っ込んで行った時に、ソイツを使えば防御だけじゃなく反撃だってできたはずだ…なんでそれすらしない?」
精々鬼道と蹴りと、突きくらいのもんじゃねえか。
見透かしたように言うその顔がまともに見られなくて、熱くなり始める目頭から何かが溢れ出てしまわないよう堪え、捩摺の柄を横にして中也の首元にあてがう。
『ここまでしてもそんなこと言えるわけ!?何馬鹿みたいなこと考えてるのか知らないけど、今は勝負中よ!!?』
「…俺はお前に異能も使った。体術なんか大いに使って、挙句の果てには…お前を刺した」
『だから何、今更そんなことに怯んで「お前、あれわざと避けなかっただろ」…何言ってるのか分かんない』
「お前に見えてなかったわけがねぇ。…そこまでして体張るなんてこと、お前は自分のためにはできねえよ」
言ってのけられた。
今まで、そこまで見透かされたことなんか…。
なんで、どうして貴方まで。
そういうこと、言ってくれる人が真っ先に私の目の前から消えていくのに。
『…やめて』
「…よっぽど大事な奴のためじゃねえと、そこまで意地になんかなれね『やめてってば』……なあ、頼むから…頼むから、一人で抱え込まないでくれよ、そういうの」
『聞き飽きた、そんな言葉…そういうこと言って皆一人にする。皆、皆私のこと置いて…、皆死んじゃう…ッ!!どれだけ私が我慢しても、勝手に深入りしてきて信頼させて、無責任に皆置いてくの!!!』
誰も関わってなんて言ってない。
誰も愛してくれなんて言ってない。
何度も思った、こんな感情知らなきゃよかった。
感情なんかなくなればよかった。
だから消してたのに戻されて、思い出させてまた同じことの繰り返し。
『精々捩摺くらいのものよ、ずっと私といてくれたのなんて!!分かる!?結局は自分の魂なの!!自分しかそこにいなかったの!!!!』
「…蝶」
『勝手に懐かせて身体造って、挙句私を置いていく…人に仲間作りなんかさせといて、仲間諸共連れていなくなる!!』
いくらでも出てくる、私の黒い部分が。
いい子になれなかったものが。
いい子にさせてくれなかった感情が。
『信念貫き通して立派に戦って、私に殺させて…私のために戦うために引き離したくせに私の目の前で死んでいく!!』
だからいらなかったのに