第4章 新しい仲間と新しい敵と…ⅱ
一方、教室の状況は殺伐としていた。
「なんで皆してそこまで深く追求するんだよ…あとさっきの、中也さんとずっと一緒にいたとかどういう神経して言えたわけ?」
「い、いや、つい口から出ちまったっていうか…でも本人がそう言ってたじゃねえか」
本人が言ったと言い訳する相手に対して、赤羽は殴りかかりたくなる衝動に駆られる。
「ねえ、修学旅行の時さぁ、中也さん本人が何回か言ってたの聞いてなかった?色々あって四年振りに再会したばっかりだって言ってたよね」
ある組織に拉致されてと白石に教えられはしたが、詳しく教えてもらえなかった事を考えると、よっぽどのことがあった事は目に見えていた。
それに何よりその時のことを思い出して、その時中原に頼る事が出来なかった彼女が自分の目の前で怯えていた事を思い出す。
赤羽が言っても、何人かは白石を心配した様子でいたが、殆どは口を閉ざして目を逸らすだけだった。
「…もういいよ、俺は蝶ちゃんのところ行ってくるから」
「あ、カルマ!!」
「カルマ君!」
どこにいるのかなんて聞かされてないけど、彼女の性格を考えれば、この校舎から遠く離れてはいかないはず。
そう考えた赤羽は、迷うことなく外に出て屋根の上を見て話しかける。
二人の人物が後をついてきていたことに気付かずに。
「蝶ちゃん、いるんでしょ?話してもいいかな」
カルマ君の声が聞こえて下を覗き込めば、バツが悪そうに笑いかける彼がいた。
『…うん、そこにいて。移動させるから』
「おお、ありがたいねそれは」
カルマ君を能力で屋根の上に移動させると、私の隣に座ってくれる。
『さっきは本当にありがとう、私の為に動いてくれて』
「ううん、元々こういう事になった時に力になりたくて色々話聞いてたんだから…どうにも出来なかった自分が今すっげえ悔しいよらごめんね」
『カルマ君が謝らないでよ、私すっごい嬉しかったんだから。じゃなかったら今頃、多分横浜に逃げてる』
これは心からの言葉だった。
もしもカルマ君が私の前に立って味方だと主張してくれていなければ。
一人になっていれば、私はすぐに椚ヶ丘を飛び出して武装探偵社であれポートマフィアであれに逃げ込んで、また誰かに縋り付いていただろう。
今現在カルマ君に縋り付いているようじゃあ、あまり大差ないのかもしれないのだけれど。
