第26章 帰郷
内容を細かく知る太宰…それから後は浦原さん。
その二人と平子と俺だけがその場に残り、他には退席してもらうことになった。
とりあえずは書類データだけを取り上げて、蝶の身体について順を追って話していく。
浦原さんにしたものよりも更に詳細に、どういった経緯で何が起こっていたのかを。
最初、人体実験と聞いただけでも明らかに表情が崩れた平子に少々心配しはしたが、それでも蝶にとってそれほどの存在になってしまっている人間なのだ…嫌だと逃げ出さない限り、全て受け止めてもらわなければ。
「____……と、まあこんなもんなんだが……かなり長くなったな、やっぱり。で、そういうことなんだが…どう思うよ」
「…いや、すまん…そんな話やと予想してへんくて………えらい控えめな表現になってまうけど、ショックがでかいわそれ」
「ショックって?」
「……あいつがそんな状態になってるのも知らんと、側に行って助けてやれんかった自分が情けのうてしゃあない。…それから、ほんまにありがとう…澪のこと」
まさか自分が例を言われるような立場になるとは思ってもみなかったのだが、それでもひとまずホッとした。
「いいや、俺はあいつのこと勝手にかっさらっていっただけだ。…今の話聞いて、あいつがまあ中々特殊な体質だったりするのは分かってもらえたかと思うんだが………それを聞いて、あんたに離れていかれるのが心底恐ろしかったんだよあいつは」
「…あンのアホはほんま…、何回言い聞かせても学習せん奴やで」
「平子サンがここで態度急変なんかさせたら、真っ先にアタシに殺されますもんねぇ?」
「浦原さんってそういう所はこの帽子置き場そっくりなんですね…なのにどうしてこうも違うのやら」
「おい、最後のやつだけおかしいだろ何か」
この世界における蝶にとって俺のような存在が、平子なら…
「…手や足が散々に出ていたり、口がキツくなってあんなあたり方をしてしまっていたのは俺が代わりに謝る…だから、あいつのこと、怪訝に思わないでやってくれないか」
「!!…なんやお前、そんな謝らんでも…」
「一番キツかったのはあいつだろうから…一番謝りたいのも、あいつだろうから」
「………これは惚れるわ、男の俺でも惚れてまいそうや。……ありがとうな…お前やったってきっついやろ、好きな女のそんな話すんの。…ほんま、ありがとう…」