第25章 収束への旅路
蝶には伝えていなかったその事実を、どうして俺が…はたまた蝶が知っているのか。
あいつの性格上、異性のパートナーを見つけるだなんてこと自体が予想外の行動だったのだろうが、この件に関してはそれ以前の問題だ。
そうか、蝶の様子を確認していた訳でもないから、知らないのかこいつらは。
「…あんたら、蝶のエネルギー反応は見れていたんだよな?それって、あいつの肉体が再構築されるのもわかるってことなのか?」
「そうッスね…自暴自棄になっていそうな時期からかなりの年月が経っていたので、この世界にやって来てから頻発してその反応があったことに違和感は感じていましたけど」
やはり気付いている。
恐らく、そこも話したかったところなのだろう。
「その件なんだが…少し長くなる上にかなり酷な話だ。今はデータを持っていないから口頭でしか説明出来ないが…」
「…よろしくお願いします」
頭の中にある記憶から、あいつの話していたことも引き出して、蝶がこの世界にやって来てから俺に出逢うまでどんな生活をしていたのか…どうして子供らしくなりきれなくなってしまったのかを、説明する。
それを浦原さんは驚くことも衝撃を受けることもせず、ただ真剣に聞いていた。
そして、一言
「貴方のような方がいて下さって、本当によかった…」
そう、言葉にした。
色々な異世界を渡る上では、蝶の身体のことを考えれば…言い方は酷いものだが、予想の範疇だったのだろう。
可能性のひとつとして、考えられないこともなかった…そういう目だ。
「…実は、彼女の身体を構築する際、どうしてもサンプルとして“僕”の持っていない検体がありました。…それが卵子…卵胞なのですが」
「…成程、それで“作ってやれなかった”ってわけか」
他の誰かから採取したところで、それはその誰かの卵子である。
それを身体に埋め込んで複製しても…それはそれでショックな話だ。
「ただ、あの子の身体は自力で必要なものを生成することが可能なものでして…誰か、適合性の高い相手から直接似たような物質をそこに得る事で、それを必要なものだと認識させることが可能になるという仕組みでしてね?」
つまりは、俺があいつの胎内に精を注いだことによって、その対になる卵子という物質が生成されたということ。
…納得がいった。
「…俺のことを、恨むか?」
「いいえ…感謝しかない」