第25章 収束への旅路
「…手前こいつに下心ねえのかよ?…全くねえってこいつに誓って言えんのか?おい」
「お、お前澪の彼氏やろが、何を言うて『…誰が言ったのよそんなこと、私の旦那に失礼なこと言わないで』旦那あああ!!!?」
「まあそういうことだ…で?俺は粗方こいつから話を聞いていたから……てっきり、手前ら二人とも両想いのまんま離れる羽目になったんじゃねえかと思ってたんだが?」
清々しく言いきってやると、阿呆そうな顔が余計に阿呆そうな顔になって、そこから相手も何かを察し始めた。
「…澪?…まさかお前…さっきまでの本気で気にして…?」
『……っ、だ、から…とっとと帰れって…、』
「…なんやお前、ガキみたいに拗ねおって」
『………悪かったわね、ガキみたいになって…、て…____』
蝶を撫でてきた手は、もう何十年も…何百年も感じていなかったであろう手。
渇望していたあたたかさ…戻りたかった場所。
「お、やっとちゃんとこっち向いた…えらい綺麗んなって。……んで?いつになったらその男と別れて俺の女になるん?」
「「「「ブ、ッ…!!!!!」」」」
「は?喧嘩売ってんのか手前」
『え、…、は、っ…?何、言って…』
「こちとら一世一代のプロポーズ中やって…言えんかったから言うとこ思て」
『嫌だけど…ッ…?』
「積年の想いが一瞬で振られたわ…お前のそういうところ、ええと思うで…」
突然褒め回し始める平子に、蝶は頭が追いつかないのか全力で照れ始めている。
…いや待て、こいつ今サラッと蝶のこと口説こうとしやがった。
「…って蝶!!?いいのかよ、お前俺に気遣ってんならやめろよ!!?そもそも出逢ってなかったかもしれない人間なんだから、ちゃんと____」
『…何、今更離すと思ってんの?…殺すわよ』
「……お前…、…ほんっとそういうところだぞ…ッ」
どうやら、端から俺から離れていくつもりはないらしい。
こっちは腹くくってたってのに、やってくれる。
「えらい懐いてるなぁ…こいつ素直にならせるん大変やったやろ?お前すごいわ」
「…どうだかな」
こんなにも子供っぽい蝶が、見られるだなんて。
こんなにも…違うだなんて。
しかし、それでも迷うことなく俺を選んでくれた蝶に、どうしようもなく嬉しくなって。
「…んで、俺への挨拶は?」
『!!……久しぶり、……真子』
「…おう!」
