第25章 収束への旅路
「なになに澪、あんたあたしの抱擁を避けてまで…って、………中原、中也…だっけ?…あんたすごいわね、この澪がこんなに懐いてるだなんて」
「?…どういうことだよ、こいつは結構人懐っこいだろ」
「……へぇ…?…えらく丸くなったのねあんた?平子隊長が見たら面食らいそう」
『……あんな奴とっとと死ねばいい』
「…なに、また何かあったの?あんた達…再会して一時間も経ってないのに?」
腕の中で俺を求めてきた少女の豹変ぶりに、一瞬耳を疑った。
しかし、これは見たことがある…この様子は…
「お前…さては混乱しすぎてまともに口も聞いてねえな?その様子じゃ…挨拶しに行くぞ、連れて行け」
『!!?な、ッ…なんで中也がついて「じゃねえとまぁた意地張ったり俺のこと気にしたりしてろくに対応出来ねえだろうがお前」…ッ、……命令?』
「実行しねえなら一ヶ月一緒に寝てやらねえ…手作りのデザートも一ヶ月抜き」
言った途端に扉が出来る。
その様子を見た箕浦さんと松本とかいう女は、唖然として驚いていた。
「あっ、おかえりなさい…帰ってくると思いましたよ。貴女がそれほどまでに信頼できるお相手だ…アタシと似た性分のお方だと思いました」
にこやかに微笑むその男…一見ヘラヘラしているだけにも見えるのだが。
感覚で分かった…多分こいつ、相当できる。
「…ほら、言いたいこといっぱいあるんじゃねえの?」
『ッ、……き、すけ…さん…』
「…はい」
ふふ、と微笑ましそうに蝶を見つめるその男…恐らくこの相手が、浦原喜助。
蝶の名付けと育てと…生みの親。
天才科学者…蝶に核を与えた、“死神”。
『…、ひ、さしぶり……っ』
「…よく言えました。…おいで、もう怖くないでしょう?」
『っ、…白哉、さんも…、乱菊さんも…ッ』
走って浦原さんに抱きつきに行った蝶に少しだけ寂しくなるも、ここは大人になって抱きつかせてやる。
…せっかく会えたんだ、あれだけ渇望していた人間に。
「……、こ、こいつ…えらい可愛らしくしおって…っ」
ふと、医務室の方からそんな声が聞こえた。
そしてそちらを振り向いて、本能的に察知する。
____こいつだ、多分…いいや、ほとんど間違いない。
蝶の、恐らくは本当の初恋相手。
自覚がなかっただけで、話を聞く限り…俺の予想では、蝶と両想いの。
「…蝶、もう一人いるぞ?」
