第25章 収束への旅路
旅館の中で感じていた、視線。
それもものすごい数の…気配が強くて、得体の知れない相手から視られているのが怖くって。
『…、?』
「!起きました?…手荒な事をしてしまいすみません、どこかお怪我なんかは……?」
露天風呂に行こうとして更衣室に入ってから…誰かに腹部を強く殴られて、何か…よく知っている術で眠らされて。
ボヤけていた視界がハッキリすると、そこには男の人が三人。
知らない人…知らないはずの人。
なのに、なんて…なんて、安心するんだろう。
私に向かって手を伸ばす相手に警戒心を奮い起こして、後ずさる。
『……何が目的で…!…戻ってる…、』
体が、十四の体に戻っていた。
恐らく、能力が解けてしまったのだ。
「おいおい、警戒させてるやんけ…これやからお前のやり方は…」
「いや、だってお連れさんの目の前でなんて…気を使っちゃうでしょう?この子なら」
「…さっさとしろ、このままでは“白石が警戒を解いてはくれないぞ”」
よく知っているだろうがな。
一人の人がそう言うと、私に近寄っていた人が、何かの端末を…見知った端末を操作して、姿を変える。
三人共が、変装で…いや、この場合は私が催眠にでもかけられていたと言った方が正しいだろうか。
元の姿と思わしき見た目に変わったところで、私は言葉を発せなくなった。
『____…、そ……な、…なん、で…ッ』
口は開いて閉じられないのに、声が思ったように出せない。
「なんでって……ちょっと時間がかかりすぎちゃいまして。…頑張りました、遅くなっちゃいましたけど」
「…そうじゃないだろう…困惑させている」
二人の人は、そういった反応をこちらに返す。
しかし、中でも私が一番に目をひかれたその相手が、その場の雰囲気をぶち壊すようにして声を発した。
「えっらい大人しい奴やんけ、こいつほんまに“澪”か?人違いやろ、あいつがこんなに女の子らしいわけがない」
「『な、ッ…』」
私に近寄っていた人と声が重なる。
『失礼、な…っ…』
「悔しかったら反論せえ、何をビビっとんねん。亡霊ちゃうぞ、こちとらやっとお前に会いに来れ…!なんや…えらい殺気やなぁ?」
「…“朽木さん”、お願いします」
『!!ま、待って!!…殺さないで…手、出したら……』
「…了解した」
一瞬でその場から消える男の人…名を、朽木白哉。
