第4章 新しい仲間と新しい敵と…ⅱ
『ああもう中也さん、気持ちはすっごいうれしいんですけど、一応私ももう立派な探偵社員でですね?』
「探偵社の仕事だって中々危ねえもんがあったりすんだろうが!何で蝶に仕事なんか回してやがる、もういっその事俺が苦情を」
『新人教育の依頼くらいなら、そんな危ない仕事回されませんから!』
朝からまた中也さんの心配症が発病。
最早持病なんじゃないかと思う程によく発症しているこれは、嬉しいのだが朝にやられると時間が危なくなる。
『ていうか、中也さんが探偵社にクレームなんて入れちゃっていいんですか?一応敵対組織の幹部さんですよ』
「あ……だ、だがもし俺のいないところで何かあったら」
『探偵社の皆さんが着いてますし、大丈夫ですってば。もう私行きますよ?』
今日は可愛い可愛い中島さんとの初任務なんだし、遅刻するわけにはいかないんだから。
扉を作って開けようとすれば、中也さんに手首を掴まれる。
流石にそろそろちょっと強く言おうかと思ったが、中也さんに先に喋られた。
「蝶。お前、今日指輪俺に預けていけ。直しとくから」
『指輪?直しとくって一体…』
突然出された指輪の話題に、反応せざるを得なかった。
「お前、それ付けたまんま海に入ったんなら、壊れてんじゃねえかと思ってよ」
『え…あ、そっか。それで中也さんそんなに必死に』
「必死じゃねえよ!……ほら、今度はちゃんと水没しても大丈夫なように頼んでくっからよ。すぐに返すから預けろ」
水没して指輪が壊れたわけじゃない。
壊れたのは、中也さんが私にこの指輪を渡す理由の一つとなった“中身”の方だ。
『はーい。でもそれがないの落ち着かないなぁ、折角中也さんからもらった御守りなのに』
「御守りもだが、こいつがちゃんと機能してくれねえともしもの時に助けられねえからな。居場所だけでも分かってれば、俺はどこにだって行ってやれるからよ」
そう、この指輪には、位置情報を発信するチップが埋め込まれている。
ただし、常時その情報が中也さんに伝わっているわけではなくて、私に何かあったのではないかと思われるような状況に陥った時だけ、彼が操作して信号を出すのだ。
首から指輪をチェーンごと外して中也さんに預け、ちょっとだけ抱き着いてからまた扉の方に戻る。
『行ってきます…は、早く返して下さいね?』
「おう、意地でも今日中に仕上げさせる」