第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
中也さんはきょとんとして私の前で視線を合わせるようにしゃがみ込み、私の目を見ながら話を聞こうとしている。
しかし私が考えていた事なんていったら、中也さんと結婚したらとか中也さんのお嫁さんになったらとか、本人の前では死んでも言えないような事ばかりだ。
だからちょっとだけそのへんは誤魔化して答えることにした。
『あ、あのね?さっき広津さん達にプリン渡しに行ってきて…立原だけお土産買う時の人数に入れてなかったから、昨日作ったプリンあげたの』
「ああ、そういや作ってたな。あれまだ家にある分今日食っていいか?」
何で知ってるの中也さん、私バレないように作ってたはずなんですが。
『え、知ってたの中也さん!?てか中也さんに食べていただくだなんてそんな恐れ多……じゃなくて!そ、それでプリン食べながら立原が、将来いい嫁になりそうだなって…で、ちょっと想像して恥ずかしくなってただけ、です』
うん、嘘は言ってないよね、ちょっとだけ言えないようなところを濁しただけで!
「よっ…!!?だ、ダメだぞ蝶!?お前はどこにも嫁になんか出さなっ…あああでもお前がどうしてもって言うんなら仕方ねえから、絶対に俺んところに連れてきて、そっから」
『中也さん、私誰かと結婚するつもりないですよ?』
一人で妙に焦る中也さんを見て逆に冷静になった。
てか何、どこにも嫁に出さないとか前にも何か聞いたような気がするんですが。
「ああ!?したけりゃしたいようにやれよ!じゃねえとお前…ああでも絶対ぇ相手の野郎は俺が一発締めてからに」
『中也さん!!…私しないから、結婚なんて。中也さんと一緒にいるのが一番いい』
中也さんは、私が相手として想像してたのが自分だなんて思いもしないのか、一人先程の私と同じように迷走していた。
だけど私は中也さん以外とそういう関係になるつもりなんてさらさらないし、結婚なんて願ったとしても出来ないから。
そうだ、よくよく考えてみれば私、結婚もお嫁さんもなにも、そんなものにはなれないじゃないか。
そこまで考えて、その先を考えるのをやめた。
「な、何言ってんだよ…女なんだからしたい奴が出来ればすれば」
人差し指で続きを言うのを制した。
ごめんね中也さん、でも、ほかの誰でもない私の幸せを考えてくれる中也さんだからこそ、もうそれ以上言わないで。
私には戸籍がないんだから。