第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
『そ、そんなの中也さんにだって作ってるし…試作よ試作!毒味みたいなものなんだから!』
褒められる事にあまり慣れてなくて、そんな小さな事でも照れてしまって素直になれない私は、またしても可愛げのない事を口にする。
「毒味でもなんでもいいよもう美味え!!」
「立原君がちょっと羨ましいね…勿論お土産も美味しいよ、ありがとう」
広津さんと一緒に銀さんもお辞儀をしてくれる。
『絶対何か文句の一つでも言われると思ってたのに…』
「こんな美味いもん食わせてもらってんのに何で文句なんか言わなくちゃなんねえんだよ?それにしてもあれだな、お前、将来いい嫁になりそう」
突然投下された立原からのいい嫁になりそうという発言は、私を驚かせるのには十分なものだった。
広津さんも広津さんでそうだねなんて言ってるし、銀さんもうんうんって頷いてるし。
え、ちょっと、誰か否定してくれませんか。
てか嫁って…え、嫁だよね。
『よ、嫁とか…うああ……』
想像するのも恥ずかしくなって頭がショートしかけた。
無意識で言ってくる天然立原には何も悪気なんてないようで、どうした?だなんて言ってプリン片手に私を見る。
ていうかどんだけプリン味わって食べてんのよ。
『ど、どうもしないわよ馬鹿!天然!でもありがとね!』
「褒めるか貶すかどっちかにしろよ」
よ、嫁……誰の?
中也さんのお嫁さん!!?
もしもそんな事になれたら…
広津さん達に挨拶して廊下を歩きながら、立原に言われた台詞を頭の中で繰り返して迷走させていく。
『も、もしもそんな事になったら………ああああ煩悩が消えないっ!!何ておこがましいことを考えてるのよ私、なれるわけないでしょそんなのに!』
「あ?何になれねんだよ?」
『だからおよ…っひゃああ!?』
突然ひょっこりと現れたその人物に、背後から声をかけられ、耳に息を吹きかけられた。
驚きすぎて心臓がバクバク鳴って、背後を振り向く余裕もなく耳を押さえて立ち止まる。
『な、なぁっ…いきなりなにがあっ……』
「びっくりしすぎだろお前、驚かれすぎてこっちがビビったわ」
私の頭に手を置いて目の前に回って姿を表す。
勿論、私にこんな事をする人は一人しかいない。
『だ、だって私さっき考え事してたから…だから気配感じなくってそのっ!!』
「考え事?何だよ、話してみろ」