第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
お前なぁ…と言い返せなくなる立原に、あと気軽に来やすいからと付け足せば大人しくなってくれた。
「そ、そうかよ。まあそれなら?来させてやらねえ事もねえけど?」
『あ、ねえ早く広津さんのとこ行こうよ』
「ちょっとは俺の話聞けよおお!!」
当然のように立原の部屋から出ていこうとすれば立原が嘆き出した。
頑張れ立原、そんな立原も健気でいい子だと思うよ。
広津さんの執務室にお邪魔して、黒蜥蜴の主要メンバーである広津さん、銀さん、そして一応立原が集まった。
『うふふー…これが!お約束のプリンです!』
修学旅行で買ってきた二つ入りのプリンを出して、一人テンションを上げる私。
「おや、でもこれは二つだけですが…」
『広津さんと銀さんの。立原は知らなかったから買ってなかったの』
そう言えば、今度こそ本気で泣きそうになる立原。
そんな彼を宥めようと、相手の肩に手を置いて慰める。
『まあまあ立原君、君にはこっちのプリンをあげるから。仕方なーく追加で買ってきてあげたからさ』
「…追加って、どうせ市販の安いやつとかなんじゃねえのか?」
『それは食べてみてからのお楽しみってやつ。じゃ、私は他も当たってくるからまたね!』
「あ、おい蝶!」
「ありがたくいただきます」
黒蜥蜴の三人と別れ、首領の部屋にもプリンを渡しに行った。
エリスちゃんと会うことは出来なかったが、首領が涙を流してこちらを見つめてきたので、粘ること無くすぐさま退室させていただいたのだが。
そして最後に残った二つのプリンは樋口さんと芥川さんに。
今日が都合が良かったから会いたかったのだが、生憎相手の方が予定が合わなかったようなので、広津さんに渡しといてもらおうと思ってもう一度部屋を訪ねた。
『失礼します広津さん、ちょっと頼み事があっ……て…………どうしたの立原、そんな泣きそうな顔で私のこと見て』
お邪魔したのはいいが、恐らくプリンを食べたのであろう立原がこちらを凄い顔で見てきた。
「い、いやこのプリンが何かな?すげえんだよ、何とも言えねえくらいに」
『……私の手作りプリンに何か不満でも?』
「え、手作りでこんなもんが作れんのか!?すっげえ美味えよ!!俺だけこんなの食えてるんだって考えると寧ろラッキーなくらいだぜ」
驚いた。
てっきり彼の口に合わなかったからかと思ったのに。