第25章 収束への旅路
「どういうことだよ、必要ないって…悪いが俺も今は余裕が無い。簡潔に聞かせろ」
「簡単さ、彼女の居場所も、ここからどうするかも僕には分かるから」
「「「!!!」」」
「…まあ、暫く出てきてくれないだろうけど。…かなり根気がいるよ?耐えられるんなら教えてあげてもいい」
「…耐えるも何もあるかよ、あいつを待つくらいのこと朝飯前だ」
そうか、それなら安心だ。
なんて口にしてから、そいつはハッキリと口にする。
「蝶ちゃんが今いるのは…社員寮の彼女の部屋だ」
「!…それなら「ただし」…ただし?」
「…かなり本気で存在ごと希釈しちゃってるね。他人が認識することさえも危ういレベルで…さらに言うと、完璧に壁の中か別空間の中にでも閉じこもりきってるところだろう」
ありえない話じゃあない。
何せ、俺も今の蝶があそこまでキレるところは初めて見た。
全くもって予想がつかない。
「……構うかよ、それなら俺があいつの部屋で待ち続けてやるさ。…あいつに最初に会うのは俺だからな」
付いてくるなと、そう言った。
多分、それは全員に伝わっている。
走って蝶の社宅に移動し、こっそりと名探偵が俺に預けたマスターキーを使って中に入る。
良くも悪くも、シンプルな部屋…殺風景で、思い出というものさえ存在しないような、冷たい空間。
…ここであいつは、一人だった。
俺に助けを求められなくて…誰かに頼る勇気も持てなくて。
必要最低限の物しか置かれていないその部屋を見渡して、改めて彼女の過ごしたここでの半年を実感する。
ろくに飯も食ってねえな、この様子じゃあ。
味がしねぇとか、身体が受け付けねぇとか言ってそうだし…実際にそうなっていそうだ。
「…お前、俺のこと舐めてっと後悔すんぞ?…死んでも待ってっからな」
堂々と床に座って、大きな独り言を舌打ち混じりに言い放つ。
流石に不眠というわけにはいかないだろうが、それでも待ち続けてやる。
俺は世界一お前に執着する男だからな…変態舐めんな。
「____だそうだけど?…いいの?私にこんなことされてるのに抵抗しないで」
『…聞こえない。それに、貴方は何もしてないよ…私、何も感じないもの』
「……それならキスでもできちゃうなぁ…?」
『…見ないふりしててあげてもいい。その後痛めつけられた果てに死ぬ覚悟があるんなら』
