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第25章 収束への旅路


「…っ、は……手前、俺がこれくらいで潰れるとでも思ってんのか?舐めんなよ…これで満足だろ、とっとと元いた所にでも戻りやがれ」

「ああ、大満足だ…よっぽど妬いちまったようだからねぇ?……妾達はじっくり観察させてもらうことにす____」

ひやりと下がる温度。
冷たくなる空気に、その場にいた全員が凍りついたかのような感覚に陥るほど。

女医も言葉を途切れさせて、予想外だと言わんばかりの表情を浮かべる。

『…もういい、帰る』

「!?蝶、お前帰るっていきな『話しかけないで…何言われても耳障り』耳障…!!?」

こちらの事情をそんなに見ていなかった人物達の中で、咄嗟に反応を示した立原にさえその対応である。

蝶がこんな言葉を親しい人間に向けて放つだなんてよっぽどだ。

拙い、これはどう考えても。

「蝶!!お前、帰るってんなら俺も____」

『____知らない。…貴方なんか、知らない…ほっといて』

「…蝶ちゃん?…えっ、ちょっと…!?君、このタイミングで私を……、蝶ちゃん!?」

太宰の方へと歩み寄って、その手を取って引いていった。

探偵社の扉から出て行けばそのまま音も聞こえなくて…慌ててそこを開けた時にはもう、蝶も太宰もいなくなっていて。

「…手前ら、一枚かんだからには……責任取ってこの会、またやり直せよ。…今日のところはなんともならねえ、俺はあいつを探すから…この場はとっととお開きだ」

「……中原さん、僕あんな蝶ちゃん初めて見たんですが…あの様子は…」

「……無理もねえよ、ただでさえここんところ一気に状況が変わりすぎてんだ…太宰の奴を連れて行ってるだけまだ自棄になる可能性は薄い。けど、俺の目の前であいつを連れて行くってことは…相当頭にキてやがる」

谷崎にそう返せば、そんなに…と、口にした。

酒を飲まずに不機嫌にさせてしまったのは勿論だろうが…恐らく最も気に食わなかったのは、女医の手によって飲むという選択へと至らざるを得なかったという点だろう…俺に他の女が触れたことであろう。

こいつらは半ば、蝶を少し妬かせるつもりだったくらいなのだろうが…“今の”蝶には拙すぎた。

「とりあえず俺は一旦家を見に行ってみる…悪いが、誰かうちの拠点に蝶が来ないか残ってもら…」

「その必要はないよ」

言いかけたところで、名探偵…江戸川乱歩がそう言った。
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