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第25章 収束への旅路


「…それで、生きてる心地……!それでさっき、泣くのを止めさせないでくれって…?」

「そういうことだ。…何百年も我慢してたんだ、もういいだろ…その分泣いて、甘えたって」

痛いほどに俺を求めていたあの時の蝶の手の感触を、恐らく俺は生涯忘れない。

「多分背中に、こいつの腕の力で赤くなった痕でもできるだろうな…こんなことが、驚くことに今まで、ただの一度もなかったんだよ」

「……中也さんは、大丈夫なんですか?…その、感覚が…って…」

「!俺…?…俺は、大丈夫だよ。生憎、俺がいなくちゃどうしようもなくなってまた生き地獄に戻っちまうような…可愛らしい駄々っ子がいるもんでな?」

それに、と付け足して立原の方に目を向ける。

「…手前ら置いてどっか行ったら、この組織が心配でならねえよ」

俺がいないと頼りねぇからなあ、まだ手前らじゃあ。

軽口を叩くと、ほっとしたのか、立原の表情が少しだけ柔らかくなった。

「本当…頼みますよ、中也さんがいないと大変なことになるんですから。……無茶しすぎないでください」

「はっ、誰が無茶なんかするかっての…無茶する前に蝶に必死に頼み込まれて止められたさ。感覚、“全部”俺に移せっつってたのに…まあ今となっちゃ無理な話だったんだろうが」

感覚…という名の核なのだが。
そこまでいくと、こんな感覚がふりかかるだなんて想像しただけでとら今でこそ言えるがゾッとする。

俺なら…多分、耐えきれない。

「あんたって人はまたそういうことを…蝶が一番心配するんですからね」

「手前も大概、こいつの事好きだよな」

「はぁ!!?何を…っ、…俺はこいつの親友なんですから」

「蝶と似てるなぁその反論の仕方…面白ぇ」

「こいつほど反発しませんよ俺は…こんなツンデレ野郎と一緒にしないでください」

「ははっ、今となっちゃもうツンなんて要素見当たらなくなりかけてっけどな」

「…と言いますと?」

「デレデレ」

「言われると思いました」

あんたも人のこと言えねえよ、とでも言いたげな目でこちらを見る立原に、本題は?と聞き返す。

「ああ、そうでした。…首領からの命令で、その……探偵社の奴らが蝶の容態を心配していて大変だそうなんで、中也さんと一緒にあとで顔を出しに行ってやってくれ、と」

一応二人共病み上がりだからと、黒蜥蜴も一緒に行くそうだ。
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