第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
名前を付ける。
私は、その行為が、される方にとってどれだけ嬉しいことなのかを知っている。
「自律思考固定砲台から何か一文字とろうよ!」
「じゃあ律は?」
「それにしよう!」
___手前、名前は?___
その光景を見ているだけで、力添えをした甲斐があったなって、泣きそうになって。
___白石 蝶…それが今日から手前の名前だ___
私の様子に気付いたカルマ君は、笑いかけてくれた。
「よかったじゃん。努力が報われたみたいでさ」
『努力?何のことよ…っ、でも本当に良かった。名前って、付けてもらえるとすっごく心が暖かくなるの。目の前が一気に色付くの…良かった』
「……うん」
よしよし、と言いながら二回ほど頭を撫でられ、何だか恥ずかしくなってそっぽを向いた。
しかし翌日、朝のHRで烏間先生から再び固定砲台についての話があり、改良行為も禁止とされる。
それを聞かされ、皆どことなく表情が強ばっていた。
一時間目が開始し、銃撃に耐えようと緊張感が漂う。
固定砲台は以前のように、銃を出して発砲した。
しかし、BB弾は飛ばされず、銃から出てきたのは大量の花。
教室にはたくさんの花びらが舞う。
「花を作る約束をしていました…」
固定砲台…改め律。
彼女が言うには、協調性が暗殺には必要不可欠であると判断し、作り手側から消されそうになったプログラムデータをこっそり隠しておいたのだとか。
それによってただの優秀な機械からクラスメイトとなった彼女は、皆からあたたかく迎え入れられるようになった。
『良かった…頑張ったね、律』
「白石さん…はい!それもこれも、全て殺せんせーと白石さんの手入れのお陰です!」
「「「えっ」」」
この天然娘は…!!
「待って、白石さんが手入れしたってどういう事!?」
「殺せんせーとって言ったよな今!!」
『あああ私は別に何もしてないってばああ!!』
私がもう無駄となってしまった抵抗を続けていると、隣の席の悪魔が全て洗いざらい暴露してくれる。
「殺せんせーが律を改良してた時、蝶ちゃんも一緒に改良してたんだよ。ね、律?」
「はい!実質、私に追加されたプログラムの内、半分以上が白石さんによって作られたものです!」
『あーもう!!私今日は用事あるから先に帰るよ!?じゃあね!』
「逃げた」
「逃げたね」