第25章 収束への旅路
『…ッ、…ハ……ふ…っ、ぅ…』
無防備に俺の目の前で眠りこける少女の唇を、指で撫でる。
ああ、もう本当にこれじゃあ立場が逆じゃねえか…いつもお前からだったのに。
寝ている彼女に申し訳なさを感じつつも、指で撫でてから程よく彼女の息が荒くなり始める。
その様子を確認し、自身のサバイバルナイフでほんの少しだけ指先から血液を採取して口に含む。
それから蝶の頬と…頭にも手を添えて、寝ている彼女を襲うような体勢で柔らかなその唇へと口付ける。
彼女の呼吸が少々苦しくなるくらいにまで口付けて一度離せば、癖なのか身についたからなのか、大人しく唇を薄く開き始めてくれた。
『…ぁ…、っ……ン…』
「……悪いな」
そのまままた口付けて、唾液に混ぜたそれを蝶に移し込む。
…が、なんということだろうか…全然それを飲む気配がない。
その状況に陥って、初めて気が付いた気持ちがあった。
そういえば、蝶がそもそも俺にキスをしていたのって…
なんて考えて、さらに愛しくなる腕の中の少女。
確か、初めてのキスを俺を助けるためなんかに捧げてしまったんだ、こいつは。
…いいや、その後に俺が盗ったんだっけか。
もう一度口付けて、ゆっくりと舌同士をくっつけて…絡ませて、舌で撫でて、また絡ませて。
短く、荒くなる呼吸が室内にこだまする。
ピチャ、ピチャ、と鳴る水音でさえもが、耳の中で直接響いているかのように興奮させてくる。
そんな事を繰り返すうちに蝶の身体も反応を見せるようになってきて、ピク、とまずは膝から…そして肩が、小さく跳ね始めた。
『ぁ…、っ……ン、あ…♡……ぁ…♡』
舌の裏側を触れるか触れないかというようなギリギリのタッチで撫でて扱き、それから歯茎の裏へと舌を這わせていく。
もうそこまでいくと本格的に蝶の身体は感じ始めるのだが、それでもまだ飲みはしない。
…まさかこんなに難しいとは。
なんて考えて、夢中になっていたところでのことだった。
『ぁ…、ふ…♡…ぁあ…ッ、……?♡…〜〜〜〜ッッ!!!!!?♡♡』
薄く目を開いた彼女は、すぐに俺の存在がすぐそこにあるということと、己の状況に理解が追いつかなくて、目を見開いて腕を大きく動かした。
しかし俺に抵抗するようなことはなく…ただ、必死になって快感を逃がそうとするように、寝台のシーツを力いっぱいに握るだけだった。