第25章 収束への旅路
何度も昨日から考えていた。
まず、真っ先に思い浮かんだのは移し替え…しかしこちらは先程首領にも説明した通り、対価交換となるためにとても扱えたものではない。
誰かに移すにしても、したらしたで蝶の罪悪感が募るだけだ。
そして次に思い浮かんだのは、消滅能力。
恐らく俺は齢十五をとっくに過ぎている年齢であることから、使用自体は理論上可能なはずである。
が、消滅能力自体を扱うには、ただでさえ気力を消耗し、集中力を要する存在交換能力よりも更に高度な演算が必要になる。
そして精密なコントロールも。
それを今の蝶にむけて俺が使用するのは…一か八かにもほどがある。
俺は恐らく…俺でなくともこの能力を譲渡されたかといって、使用するのは避けてしかるべきだ。
何を消してしまうか分からない。
もしもそれで、俺が最愛の存在を消してしまったらと考えると…ああ、これ以上はいけない、やめておこう。
それから、話を戻してその消滅能力を蝶に使わせるという手段。
おそらくそれが一番確実なのだが…当の本人は今それを扱うのが辛いレベルにまで衰弱している。
「何か、都合よく体調だけ治してくれるような能力無かったですかね…無いですよね、じゃなかったら俺が今までこいつにキレる必要がなかったくらいには」
「うーん…輸血のように上手く解決しないものかねぇ」
輸血…確かにあれは、少々行為自体は大掛かりだが、相手が俺でさえあれば蝶には有効な手段だ。
俺の血液とならば、ちゃんと融合してあいつのための力になってくれる。
と、ふとここまで考えて、よく聞いていたワードに一瞬思考を停止させる。
「……蝶の為になる…?……血…」
「んん?どうしたんだい中也く…」
「…いえ、仮説でしかないですけど……もしかしたら、今の自分にならできるかもしれないと思って」
少し、任せてもらってみてもいいですかと伝えると、真剣な面持ちになってから首領はそうだね、と微笑んだ。
「君に任せるのが結局は一番なんだねぇ…蝶ちゃんの最高の専属医さん」
「…首領がいなきゃ今頃、俺も蝶も危なかったですよ…何回死んでたか」
「!嬉しいことを言ってくれる…じゃ、また後でお昼ご飯ちゃんと食べてね?ここに運んでもらうから…あ、ちゃんとデザートもつけといたから♪」
「それは…蝶に報告しておかないとですね」
「流石中也君!じゃ、お大事に」