第25章 収束への旅路
「…なに見てんだよ」
「いやぁ…中也さんってお粥作るのも美味しそうなの作るよなぁって」
「手前ら自分の昼飯あるだろうが…見てて楽しいか?これ」
うんうん、と頷く餓鬼共。
取り囲んで俺を見ているそいつらに、ああ、ここに蝶がいたらまた妬かせてるんだろうななどと考える。
「あれ?でも、それなら中也さんのお昼もお粥?」
「俺は蝶からの愛妻弁当食うんだよ…これはそれ食った後で」
「「「あ、食べるんだ」」」
「多分食いきれなくても吐いてでも食いきろうとするから、あいつ」
容易く想像がつく。
まあそれはそれで脊髄が痺れるほどの威力を持つ可愛らしさのひとつでもあるのだが。
「よかったぜ、たまたま担任がいてたまたま家から米を持ってこれて…たまたま調理室に調味料が揃ってて」
「先生がここでたまに夜を過ごしてるのは内緒に「たまたまあってよかったなぁ?」ぎゃーーー!!!鬼!!悪魔!!!」
「知らなかったのか?んなもん日頃から蝶にも言われてんぞ」
「蝶さんがですか!!?中也さんに!?」
「俺からしてみりゃあいつの方がよっぽどな小悪魔だがな」
おっと、これ以上はいけない。
大人の話だ。
「…にしても時間かけるねぇ中也さん?」
「かけてんのは時間じゃねえよ、愛情だ愛情」
「「「あっ、はい」」」
「……って、いくら愛情込めるにしても生米から作るって!?どんな愛情!!?」
「こんな愛情だが?普通だろこんくらい」
「お粥にこんなにこだわるマフィアの幹部って…」
やり始めたのはいつぞやの蝶の方だったがな。
俺が熱を出してぶっ倒れてるって時に炊けてる米が無くて、泣きそうな顔で必死に謝りながら作ってたのを覚えている。
別に謝るようなことじゃあないのに。
まあ、当時勝手に調理器具を使っていたことは知らないふりをしていたわけだが…お礼くらい言っときゃよかったな、なんて今更物思いにふけったりして。
「はっ、安心しろよ。元々こだわってやがったのはどこぞのポートマフィアの特別幹部さんだ」
「!…デレッデレだね中也さん?」
「悪いかよ」
「ここに蝶ちゃんいたら絶対照れちゃってるね」
それも想像がつく。
演技さえしていなければ、元々あいつは分かりやすい。
「手前らにゃあ勿体ねえ照れ顔だよあれは」
「惚気てるね中也さん」
「大人気ねぇなあ…」