第25章 収束への旅路
私の身体の核であったものを半分こしたということは、私と中也…そしてそこにいたカルマの三人だけの秘密にした。
もちろん中也が能力を扱うために色々と試行錯誤する必要はあるのだが、それでもその事実を知る人間はいない方がいい。
「よーしよし…頑張ったなぁ蝶、お前初めてなんじゃねえのこんなことするの?……安心しろよ、お前はまだ何年も一人にさせてやらねえから…鬱陶しがられても執着すんぞ?俺は」
『…どう?人間やめた気分』
「阿呆、身体は人間のままだっつの…俺もお前も。…それに、もっと言うなら俺だって…俺こそバケモンみてぇなもんなんだから」
『中也さんがそれ言わないで…って、もう一緒か』
「おう、残念ながらもうお前だけのもんじゃねえからな?……それより、さっきから顔が火照ってきてねえか」
そっと触れた手がひんやりしていた。
それに目を細めれば中也の手がピクリと揺れて、固まる。
「…朝はこんなことなかったよな?…熱、…出てっけど」
『?…安心したのかなぁ…、それか、ちょっとは…人間らしくなれたの…かな…』
「……カルマ、担任に伝えてきてくれるか?寝台借りるわ…多分、俺は身体が楽になるかもしれねえけど…こいつからしたら、慣れるまでにしばらく身体がしんどいはずだから」
理論的に考えて。
確かにその意見は的を得ていた。
私の生命エネルギーのようなものであるその核を、半分失ったこの体…
その分を他で補おうと、今必死に体が調整をしているのかもしれない。
永い間、ずっとそんな身体で生きてきたから。
「了解。…中也さんきててただでさえ驚いてたし、まあ冷静になるよう言い聞かせとくよ」
あの担任、蝶に何かあったら尋常じゃないくらい心配症発揮し始めるから
なんてケタケタ笑うカルマの声に、いつもと変わらない彼を感じてまたひとつ安心した。
『……中也、さんは…?…どこか行っちゃう?』
「!…どうしててほしい?」
『ぁ…え、と……』
外套を私の背を覆うように羽織らせて、彼は私の方を見つめ続ける。
「折角今素直だから、聞いてみようかと思って」
『…っ、…い、っしょに…いて、くれたら……嬉しい、』
「…じゃあ、喜んで。…けど、一度扉をつくってもらってもいいか?パソコンだけ持ってくるわ」
『はぁい…』
私を撫でてから、彼はまた、心底嬉しそうに微笑んだ。