第25章 収束への旅路
体が齢十五になったことで、消滅能力を使って、彼の体へ負担をかけず…彼を一度殺してしまわず、能力の譲渡が完了した。
「…身体は?」
『……私の台詞です、それ』
「…!…おおっ、すげえなこりゃ…お前と同じような力じゃねえか」
体を動かすかのように、容易く物を移動させてみせる彼。
元々の中身が同じ世界の存在だからか、あまり苦労はしてなさそう。
…いや、この人はこういうことにおけるセンスが並大抵の人じゃあなかったか。
「…何…今の?……一瞬、何か…光ってから、空が割れたような…?」
空が割れたような…カルマがそう表現したのは、決して大袈裟なことではない。
割れたのだ、空が…そこに浮かんでいた雲が。
私が行ったこの行為は、言わば世界を脅かす禁忌にさえ近しい行為。
恐らく、元いた世界の仲間達にはもうそろそろバレている。
私と同じエネルギー反応が、二つ反応を示してしまっているのだから。
『…や、っちゃった……私欲のため、に…反抗しちゃった…』
「ははっ、上出来だ。それでこそ俺の蝶…反抗期、万歳だぜ」
『……生き地獄デビュー、だね』
「阿呆、お前さえいりゃ地獄どころか天国だよ…最高の気分だ、なんでもできそうな気がするぜ」
彼が私の核を半分受け取って、扱えるようになるものはいくつかある。
瞬間移動…基、存在置換能力。
それから、おそらく彼には必要ないが壁を扱う力…そして、少しの再生能力と肉体再構築性。
セーブポイントは、私の推測では二択。
今この瞬間の肉体である、齢二十二の身体…それかもうひとつ。
中原中也という身体へと彼の存在が変換された、齢八の頃の肉体。
…どっちでもいい。
死んでも死んでも手に入らなかったものが、手に入ってくれてしまったのだから。
『…置換能力、使ったら…たとえ身体の再構築が何らかの原因によって行われなくても、理論上は私が死んでもまた生き返ることが出来る。同じ肉体のまま…』
あなたの身体の時間と引き換えにして。
「…満足だよ、それで…そしたらまた続けていけばいいだけさ。もし餓鬼になっちまっても、見てくれるんだろ?面倒」
『…!…消滅能力使っ「お前そんなに俺に甘えときてぇの?普段からそうしときゃいいのに」!!?な、んでバレ…!!』
「いい加減バレてるよ全員に、馬鹿だろお前?このクソいい子」
『褒めて「ねぇよ」…』