第25章 収束への旅路
「落ち着いたか?…いい加減気付けよ、俺は何も気にしてねえってこと」
『…私が、気にする』
「お前は俺がそういう感情を知らなかった分、人思いの優しい奴だからな。…けど、よく考えろよ?何回も言うけど、俺にそもそも愛おしいと思えるような…こんな感情教えてくれたの、他の誰でもないお前なんだぜ」
『…』
違う、そうじゃない。
奪ったの…あなたから。
蝶になってまで、こんなところまでついてきて…そこで、あなたは失った。
あの夜、私とあなたの体から現れた蝶が全てを物語っていた。
元々あなたは、愛情に溢れた人だったの。
だから、こんなところまで…私を一人にしないようにって、ずっとずっと一緒にきてくれた。
あなたがいてくれなかったら私、本当に今頃ひとりぼっちだった。
存在を一度失って、それでも私といてくれた。
「…お相子だよ、俺もお前も。…確かにお前をポートマフィアに引き入れる原因を作ったのは俺だが、あの場で俺が死んでたら…お前がいてくれなかったら、俺は恐らくポートマフィアに入ってすらいない」
素敵じゃねえか、こんなの…運命としか思えねえよやっぱり。
彼はまた、柔らかい表情でそう言い聞かせる。
運命に翻弄されたのが私なはずなのに。
抗いようのないその力に、いいようにされてきたのが私と彼だったはずなのに。
素敵、ですって。
笑っちゃう。
『…ロマンチスト…似合いすぎ』
「なんだよそれ…馬鹿にしてんなら圧死させんぞ?このまんま」
『本当にできちゃいそう…されてもいいよ、幸せだから』
私を抱きしめる腕が、背中を撫でる。
「阿呆か、お前には責任とってまだまだ一緒にいてもらわなくちゃならねぇんだよ…俺にこんな感情持たせちまったんだから」
愛おしい。
そんな、感情を。
『…次、あいつに会ったら…問い詰める。……絶対、思い出す…』
私の記憶。
私の中にあるものなのか、あいつが抜き取ってしまったたのか。
それさえ分かれば、なんとかできる。
いいや、なんとかする。
絶対にだ。
「いやいや、それはダメだろ蝶さん?先に俺に一発殴らせろ」
『中也がそれしたら死んじゃうかもしれないからちょっとだけ耐えて?』
「一回殺しとこうぜ、その方が調子に乗らなくなるだろ」
『私あんなの生き返らせるために能力使いたくないもの』
「…それには賛成だ」