第25章 収束への旅路
私が彼から話を改めて聞いてみて、感じたことはただ一つ。
分からない。
ただただ、分からない…それだけ。
『…知らな、い……なんで…』
「……記憶、操作したって可能性は?」
『!!!』
否定はできない。
だって、その時期に身に覚えのない事実として、もう一つ証明されている事柄が存在する。
そう、トウェインさんのこと。
私に誰かを助けた記憶なんか、本当にないに等しいもの…だからこそ、仕事を目撃されたのを見逃したり、出会ってそのまま生かした人間がいれば、少なからず印象にくらいは残っているはずなのだ。
なのに、全くといっていいほど覚えていない…しかしトウェインさんは、それがきっかけで私を探し、横浜にまでやってきた。
『…でも、それならなんでそんな短期間分の記憶だけ…?』
「……お前が自分で操作したか…無理矢理に操作“されたか”」
中也の発言に目を丸くした。
だって、それは可能性として、あまりにも考えられすぎることだから。
なんといっても相手はあの柳沢だ。
否定することの方が難しい。
『…中也…中也、さん』
「!…何だ…何も気にしなくていいんだぞ?お前は…」
『ッ、…こ、な世界で…生まれて、今…幸せ…?』
満足のいくような体であったとは、到底思えないはずだ。
間違いなく体は人間のそれであるが、中身はそもそも異形のもので…半分は、私が連れてきてしまったもので。
「幸せ…そう、だな……お前がいてくれるおかげで、幸せだ。……ほら、言ってんだろ?お前が生き続けてきたのは、ここで俺と出逢うためだったんだって」
的を得すぎたその言葉。
この世界で、彼は個体としての生を得た。
そしてそれを得るためには、この世界に来る必要があった。
そして…この世界において、彼さえいなければ、恐らく私は今でも死に続けて、生き続けて…
『…あなたの体…私のせいだって、言ったら…?…私が原因だって知ったら、どう思…ッ、ん…!…っ!?』
「っせぇよ…黙ってろもう…」
塞がれた唇。
少し荒くなる声。
「…それを否定すんじゃねえ…俺を、否定するな………俺が今生きてる意味を…俺を生かしてくれてるお前が、捨てるんじゃねぇ」
『……ッン…っ、ぅ…あ…っ…』
私と彼は、元はそんな…依存の関係から始まった。
これも、業というものなのだろうか。
彼は、それでも私に愛を与える。