第25章 収束への旅路
「…この爆弾、爆破するけど____」
『なぁにカッコつけてるの?君…』
「え……は…、!?」
日本人宇宙飛行士を人質にとっていたカルマの身体を、能力で重力を発生させて宇宙ステーションの床へ組み敷いた。
突然現れた殺意の塊に、さしものプロの宇宙飛行士達も動揺を見せる。
「な、何者だ!!?」
「…!?し、白石蝶ちゃんじゃあないのか君は!!?」
「何っ、この子が…」
『知ってるんですか?それはそれは…それなら私のお仕事も、知ってますよね皆さん』
ゴクリと喉が鳴る。
探偵社員であるはずの私から放出されるすさまじい殺気にたじろいでいる。
それでいい。
『…単刀直入に用件を言います。私はこの勇敢で馬鹿な中学生二人の仲間です。しかし、私はこの二人のように甘くない…もし交渉を飲んでくださらないのなら、全員まとめてこの場で宇宙の塵になっていただこうと考えています』
「!!!…これは驚いた…とんでもない中学生だよ…」
「……異能力、か」
「…分かった。ただし、二つ…こちらからの条件を飲んでほしい」
条件、という言葉に首を傾げて、何ですか?と問う。
すると、それに返ってきた返事は、思いつきもしなかったような簡単なこと。
「一つは、物資の運び込みを手伝うこと…折角ハイジャックしてくれたんだ、その方が効率がいいしこちらにもメリットがある」
『…それくらいなら構いませんが。二つめは?』
「二つめは……データを確認してもらう前に、白石ちゃん…だよね?………我々と君とだけで、少し話がしたい。いいかな?」
『!私と…?…はい』
きょとんとしたけれど、どこか真剣な眼差しの宇宙飛行士さん達の本気をどこかで感じ取る。
なにかの覚悟を決めたような…何かを我慢しているような、そんな目。
それと共にカルマを解放すると、カルマに頬を指でつまんで引っ張られた。
『…ひひゃい』
「ねえ、なんで俺にだけなわけ?渚も一緒にいたのになんで俺だけ?ねえ?」
『手荒にみせても脅せてない人の言えるセリフ?それ』
「蝶ちゃんがやるレベルで言葉で重圧かけられる奴とかいないんだって…」
はあ、とため息をつくカルマと、苦笑いをこぼして「でも来てくれて安心した、久しぶり」なんて返してくれる渚君。
そんな中学生らしいやり取りに、宇宙飛行士さん達の心拍も穏やかなものになっていった。