第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
「なんかすっごい馬鹿って叫んでたね、どうしたの?」
澄んだ瞳でそんな事を聞かないでおくれ、カエデちゃんよ。
『うーん…己の力の無さを痛感してヤケになってトレーニングしてた』
勿論私の言う力とは、ここでは女子力の事なのだが。
「トレーニングで木の上をあんな風に走り回ってたんだ、すっごいね!!」
トレーニングという言葉につられてやってきたのは岡野ちゃん。
確か体操部だったんだっけか。
『いやいや、そんな事ないよ。多分皆も、ある程度鍛え上げられたら烏間先生から教えてもらえると思うし』
「え、そうなの!?あんなすごいのを?」
『私がやってるやつは結構危ないやつだから、ちょっと違うものにはなると思うけどね』
それを聞いた岡野ちゃんは目をキラキラさせて、元気よく走って山を登って行った。
結局校舎まで潮田君とカエデちゃんと一緒に歩いて戻り、すぐに朝のHRが始まる。
しかし今日は、殺せんせーではなく烏間先生から話があるとのこと。
内容は、自律思考固定砲台をテープでぐるぐる巻きにするというのは生徒への危害と見なし、学校問題として取り扱うというもの。
やっぱり文句を言ってきたか、そう思った矢先に私の名前が呼ばれた。
「白石さんの事についてだが…我々としては勿論何とも思ってはいないが、向こうは暗殺の妨害だとして強く反発していてな」
『あー、やっぱそうなります?頭硬いですねえ全く…今回は向こうの言い分に従いますよ』
「そうか、分かった」
何が暗殺の妨害よ、まだまだ未熟なだけじゃない。
なんて大人気ないことを考えてはいたが、他の子達の暗くなった様子を見ていればそんな悪態もどこかへいった。
『……あの、烏間先生。固定砲台にはBB弾以外に、何か武器は内蔵されているんですか?』
「武器か?それは一応転校生という形をとってきているから、内蔵されてはいないはずだが…」
『そうですか、それはよかった』
この時、私の笑顔を見た殺せんせーは、すぐに私が何をしようとしているのかが分かったのだろう。
「し、白石さん?まさか貴女っ」
『何ですか?殺せんせー…私は別に、“何もしませんよ”。ね?』
「お、恐ろしいこの子っ……せんせー殺されちゃうかもしれませっ」
刹那、殺せんせーの触手が一本破壊される。
銃で撃った…ように見せかけ、テレポートさせただけなのだが