第24章 繋がること
「…嬉しそうだな本当」
『中也さんに撫でられるの大好き…』
「知ってるけど…お前も大概もの好きだよ」
異能の効果は惚れ薬…なはずだったが。
半分は幼児退行ではないのだろうかと思ってしまうほどには、今の蝶は素直すぎる。
理由を説明したところ、想像よりも遥かにすんなり通ってしまった蝶の休校。
まさかここまで自由にさせてもらえるとは思ってもいなかったのだが…それもこれも蝶の人徳あってのものだろう、本当にすごい奴だ。
そして朝から朝食を食べ終わり、最初のお願いとして頭をずっと撫で続けている。
まるで、今までそうさせないようにしてきていた時間を取り戻そうとするかのように。
「…俺と会う前に、誰かに撫でてもらわなかったのか?」
『……何回かなら。…でも、それ以上の存在になっちゃいけなかったから…怖かった、から』
「……俺なら怖くない?」
『!…中也さん、は…ずっと一緒にいてくれるって………私、と…生き続けてくれるって、言ってくれた…から…その…』
思わず頬が緩む。
そしてそれと同時にまた胸が張り裂けそうになる。
こんなに寂しがり屋な少女が、いったいどれだけのものを犠牲にして、誰にも甘えきれずに生き続けてきたのだろうか。
こんなにも愛に飢えた少女が…どれだけの感情を殺し続けてきたのだろうか。
「可愛らしい理由なこった…」
『…ッ、…っ…』
思わず、衝動的に、というのが正しいだろうか…いつもの癖でという方が合っているだろうか。
頭を撫でていない方の手を少女の頬に添え、触れるだけのキスを唇へと落としたのだが。
少しゆっくりと触れ合わせた唇を離して少女の反応を見ると、目を見開いたまま顔を真っ赤に染め上げて固まっていた。
そうか、今するとこんな…もっともっと初だった頃のような表情をするのか。
なんて冷静になってるふりをしてみたり。
『ぁ…え、と…ッ、あ…っ…』
「…お前が可愛らしくて、つい」
『!!!ッ…あ、の…』
撫で続けてやると、こちらを遠慮がちにチラチラと見て反応をうかがう蝶。
何が言いたいかなんて今更だ。
しかし彼女はいつも以上に恥ずかしいのか何なのか、中々それを口にできそうにない。
「どうしたよ…もしかして、もっとして欲しいのか?」
『っ…!!!!』
ぶわっと更に赤くなって、それから彼女は小さく頷いた。
「…いい子…可愛い」