第24章 繋がること
突如連れてこられた中也の元へ行かずとも、彼の方からこちらへと歩を進めてくる。
それからぽふ、と頭に手を置かれれば、わしゃわしゃと乱雑に撫で始めた。
『わ…っ、ちょ、中也さ「あ?なんつった?」…ち、中也…!』
せっかく朝から結んでくれたのに。
「大丈夫だよ、こいつと俺とでは明らかに状況も異なるし」
『!状況…?』
「……お前、今はもう独りじゃねえだろ?何より俺がいるんだから」
腰を屈めながら目を合わされ、私の思考を支配するその人。
そっか…ひとりじゃない。
こんなに大事な人がいてくれる。
離さないでいてくれる。
『…?…でも中也』
なんていい雰囲気に流されかけていた。
しかし私にはお見通しだ…気付かないとでも思うのだろうか。
「なんだよ?」
『なんでそんなに女の人の化粧品のにおいがするの?』
「「「「あああ!!?」」」」
周りの声に肩を跳ねあげる中也。
「女の化粧品のって…」
『…だぁれ?…外套よりもベストの方がにおうなぁ…ねえ、そんなところにこんなに…何してたの?今日』
「「「「ひっ…!!?」」」」
「いや、落ち着けよ…あいつらビビりまくってっからとりあえず殺気はしま『無理』……部下の体術の訓練つけてただけだよ」
『!…女の人が志願してきたの?そうでもなきゃ中也がわざわざ見ないよね…武闘派組か何か?』
「いや、俺が指揮してる部隊の奴だ」
『…ふぅん』
んな顔すんなよ、と苦笑いされるも、嫌なものは嫌なのだから仕方あるまい。
嗅覚が発達してなければここまでのことはないのだろうが…それはそれで気付けなさそうで嫌だなぁ。
「中也さん蝶と結婚したんでしょ?ちゃんと宥めてあげなきゃお嫁さんがかわいそうだよ」
「それも相手はこの蝶ちゃんだし…蝶ちゃんかわいそう」
「かわいそ〜…」
「なっ、なんだよ手前ら皆して…って、蝶!!?」
『…こんなにおいの人、中也の部隊にいたっけ』
「は…?」
中也に抱きつくように腕を回して確認する。
そう、今回私が眉をひそめる原因は、女性の香りがこびりついているからだけではない。
知らないにおいだ、これは…化粧品に少し紛れた、知らないにおい。
『………、?ッ…れ…?…な、…んかへ…っ____』
におい…と共に何かを吸い込んだのだろうか。
突如襲い来る目眩に、体を支えられなくなった。