第24章 繋がること
「中は……蝶、ちゃん」
『何?渚君』
一日の授業を暗殺無しで終え、そんなところで渚君に声をかけられる。
まだぎこちなさはあるものの、皆苗字が変わったことをちゃんと意識してくれてはいるらしい。
「あの、蝶ちゃん相手にこの話をしていいものかとも思ったんだけど…今から少し、裏山の方に来てくれないかな?みんな集めて、相談したいことがあって」
『…なんで、躊躇ってるのに誘ってくれたの?』
内容にはだいたい察しがつく。
そして、ただでさえ全員に呼び出しをかけるような行動をとるのが珍しい彼のことだ。
私にまで声をかけるほどに、何か考えがあったのだろう。
「うん。本当なら、聞かないべきなんだろうって分かってるんだけどさ……蝶ちゃんも、僕達と同じE組の仲間だと思ってるから。聞いてほしくて」
『!…そういう、こと……うん、分かった。一緒に行こ?』
「い、いいの?ありがとう…」
柔らかく微笑んで、穏やかに言う。
そんな嬉しいことを言ってくれるだなんて、思っていなかったから。
まっすぐそう伝えられて、嫌に思えるはずがない。
本当に、いい仲間に恵まれてる。
『多分、私は渚君や皆の助けになれるような意見は出せないし…考えちゃいけない存在だけど、それでも、ちゃんと伝えてもらえてすごく嬉しいよ』
「そ、そう…?なら良かった。…でも一つだけ…考えちゃいけないなんてことはないと思うよ?生きてる限り、誰かのことを思って考えちゃうなんて、当たり前のことなんだから」
『…私が願って、それが叶っちゃいけないから。……聞いたでしょ?中也から…“私”のこと』
こう言うと、少し瞳が物悲しくなる。
悪いことしてるな、なんて自覚はもちろんあるのだが。
「聞いたけど…でも、それだけが蝶ちゃんじゃないんだよ?存在だとか、そういう言い回しも…しなくていいんじゃないかな」
『…埋め込まれてるのと、私がそれであることは同義になっちゃうものなの。……じゃなかったら私、今頃この世界に来てないよ』
「…僕達じゃ、力になれないかな」
『十分助けられてる。“人”が踏み込んじゃいけない領域にまで、関わらなくていいの…関わっちゃいけないの』
そう、踏み込んじゃいけない領域…それを実現させてしまう人がいた。
しかしその危うさに気が付いて、その核を閉じ込めた…はずだった。
核を閉じ込めたのは、この器。