第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
『ありがとう中也さん』
「だから、俺は何もしてねえっつってんだろ…まあ仲良くやれよ、立原はいい奴だし」
立原はいい奴、中也さんがそういうくらいだ、本当にいい人なんだろう。
でも中也さんちょっとまって。
『中也さん、私が抱き着いてるのに他の人の事ばっかり褒めて…そんなに私をいじめたいんです?』
「おい蝶?なんかお前、怒って……ますか、もしかして?」
私の様子の変化にいち早く気がついた中也さんは、またもや私に敬語になった。
『さっきだって私が抱き着いてたのに、理由はどうあれ立原の方に行っちゃったのに?それに私、中也さんと再会してからそんなに褒めてもらってないし、まだ昨日言ってた何でも好きな事聞くってのも結局してもらってないし』
どうしたんだ蝶の奴?と不思議そうにする立原に、広津さんはいつもの事だと説明を入れる。
「ま、まずは落ち着こう、そうだ落ち着こう。そしてなんで今日は妬く相手が全員男なんだよ!?」
中也さんの突っ込みで、え、あれ妬いてんのか!?なんて驚く立原。
そうだよ、いっぱい妬いてるよ。
『だって途中まで中也さん独り占めにしてたのにすぐ立原の方に行っちゃうし、さっきくっついてた時だって中也さん私の事離そうとしたし』
「でもあれは立原と話をさせようと」
『ほらまた立原!私今日一日中也さん成分全然足りてないんだからね!?欲求不満が進化して中也さん症候群発症してるのにおいてけぼりにされてたの!』
私がそう言えば中也さんだけでなく、立原と、珍しい事に広津さんまでもが吹き出した。
「ち、蝶!だからお前っ、それ全然意味分かってねえから!!つか何だよ中也さん症候群て!?」
『……中也さん症候群はね、中也さんに甘えたいモードに突入した際に発症しちゃう病気なの。尚、治す為には中也さん成分が必要な模様』
言いながら彼の首元に擦り寄れば、遂に中也さんの方からも腕を回してもらえた。
「俺の成分って何だよ全く…あーもう、なんだ、愛妻弁当?今日の分も美味かったよ、明日の分からも楽しみにしてっから」
中也さんから発せられた愛妻弁当というワードに気を良くして、もう立原へのやきもちなんて忘れていた。
『……ふふ、中也さん好き』
「だからお前はっ……ああーもう、仕方ねえな!」
やけになったようにいっぱいいっぱい撫でてくれる。
やっぱり私はこの手が大好き。