第24章 繋がること
『おはよ』
「…おはよ」
新学期。
いつもなら向こうからかかってくる、軽めの口調のおはようが、今日はどこか沈んでる。
『寝惚けてる?』
「分かってるんならもうちょい気遣って優しくしてくれてもいいんじゃないの?お師匠さん」
『弟子のくせして甘えを請うんじゃありません…甘えるんなら中也にでもよろしく』
「それしたらどうせ拗ねるくせに」
『当たり前』
多分分かってて言ってこない。
私に向かって、命の事を聞くのは一種のタブーであると気付いている。
私に聞いて解決するべきことでないことも…それを聞くことで、私が一番困ってしまうということも。
『まあ、素直にやりたいようにやることだと思うよ。それが出来るうちに』
「…蝶がそれ言うと言葉の重みが違いすぎるよ」
『できなくなってからじゃ遅いからね』
「というと?……あ、ごめん」
『いいよ。悪気がないのは分かってる…私みたいに取り返しがつかなくなるまで放っといちゃいけないから』
ある意味私の体質のおかげで死ねなかったせいで、中也と出逢えたから良かったものの。
それが恐らくないであろう人達が、そうなってしまったのを取り戻すには…一度の人生なんて、余りにも短すぎる。
「そうなったら蝶に頼むかな?」
『こらこら、そうならないで下さいよ?』
「…うん」
カルマだけじゃない。
皆、多分まだ自分の気持ちが分からなくなってる。
殺したいか殺したいかではなく、殺していいのか…殺すべきなのか、殺さなければならないのか。
私の話をしてしまったことも相まって、余計に命の重みに思考ががんじがらめにされている。
そして恐らくどこかでちゃんと気付いてる。
クラスの皆の意志であれば、殺されても…生かされても、きっと殺せんせーは喜んでくれること。
どんな決断をしても、ちゃんと受け止めてくれること。
しかし、だからこそ決められない。
張本人に意見を求められない。
「……蝶は、考えてるの?」
『私は考えてないよ。考えちゃいけない子だから』
「考えちゃいけないって…願ったりすることくらいはいいんじゃ…」
『…私が強く願いすぎちゃうと、本当にそれが叶っちゃう可能性があるから』
「!……もしかして、中也さん相手にも抑制してる?」
私は首を縦に振る。
そして、けど、と話を続ける。
『いっぱい言葉にして伝えてるよ』