第24章 繋がること
結局冬休み中、クラスの誰かが暗殺計画を立てることも、暗殺を実行することもなくただ日だけが過ぎていった。
私としては本当に仕事がなくなってしまっていたわけなのだが、それでもみんなにとっては必要な期間だろう。
「お前はどうしたいんだ?…担任のこと」
『…私は人の命に関して、意見を言っちゃいけない力を持ってる存在だから』
「……そうか」
ある日中也に聞かれた。
どうしたいのか…それは、殺せんせーを殺すか否か。
仕事としてあの学校に通っている身としては、殺さなければならない者であるため、その時点で私の意思は本来必要ないものなのだけれど。
それでも、一体誰が殺したいなどと思えるだろうか。
どれだけ学校を楽しむことができたか…どれだけ、助けられたか。
零がその人格をある意味保ち続けられたのは死神の存在あってこそ。
蝶が再び解放されたのは、あの人のおかげ。
その為に失った命があったとはいえ…それでも、私にとってそれほどまでに大きな幸せはない。
誰が…殺したい?
しかし私はそれを願ってはならない。
何故なら、私がそれを強く願うと…願いすぎると、それを叶えてしまうから。
だから私は、また繰り返す。
『死ねない存在は一つで十分だよ』
そして、やはり彼も繰り返す。
「俺は連れてってくれねえの?」
『…覚悟決めてくれちゃうから困るのよ、本当』
「そりゃ最高の褒め言葉だな…」
いざとなれば、殺す覚悟は決まっている。
本人はそれも望んでいるはずだ。
だって、“彼”は私と同じだったから。
死神は、零と一緒だったから。
____知っていたのは、“殺せば人は死ぬ”ということだけ。
自分の生きている意味が分からない。
生きている意味は、どこにもない____
存在理由が無かった器。
それを与えられるのであれば、生きていてほしいとでも、ちゃんと殺したいとでも、願われるだけでも十分だ。
それが意味になるのだから。
やっと、意味あるものになれるのだから。
「じゃあ、お前がもしあの立場ならどうしてほしい?…酷なことを聞いちまうが」
『…変わらないよ、最初から』
「……怒らねえよ、もう」
頭を一撫でして、彼は私を抱き寄せる。
答えはただ一つだったから。
私を、終わらせてほしいと願ってしまうばかりだったから。