第24章 繋がること
「…とまあ、少しずつだがそんなところだ。実験内容に関しちゃ、あまり聞かせられるようなもんでもねえから割愛するとするが………大丈夫か」
教室の中は静まり返っていて、誰一人として顔をあげようとしない。
しかし、誰一人として…少女に対して負の感情を抱くような者もいない。
その様子に、少しどこか救われたような気がした。
「…あんな、小さいのに」
「…?」
ふと聞こえたか細い声。
倉橋…蝶とよく絡んでいる奴。
素直で天然なところが印象的だった。
「あんなに、蝶ちゃんちっちゃくて…なのに、なんでか誰よりも大きい背中に見えてたの。……でも、全部納得いった」
「…俺も。…最初の頃のことも……中原さんと再会するまでのことも、全部」
「そりゃ…あんなに必死にもなるわ…」
ふとした時に出てしまう、極度の怖がり。
俺に対して現れる、寂しがり…そして誰に対しても発揮されてしまう、人に対する不慣れ。
つい本音が伝えられないのも、伝えるのが怖いのも…あまり深く関わりすぎないようにする癖も、どうしてそんなにも俺に執着するのかも。
ただ全員から発せられたのは、納得がいったという言葉だった。
「相談してくれても…、って、それも難しい…わな」
「…何回か聞いてた殉職した人って、その人だったんだ」
「想像のスケール超えてて驚きの方が…ていうかそれ聞いたら尚更すげえよ、あいつ……そんなもんに耐えてきて、今ちゃんとやけにならずに生きてんだから」
本当に、そう思う。
だから人間ができていると、俺は言うのだ。
あいつはそれに気付きもしないのだが。
「………だとよ。ほら、俺が言ってたのと変わらねえって…お前はただ頑張ってきただけなんだから」
ぽつりと呟くように言った言葉に、再び教室が静かになる。
すると、小さく…微かに聞こえる、喉を引くつかせるような音。
「また織田に土産話でも持って行ってやれよ、ちゃんと友達作れましたって…喜ぶぞ、あいつお前のこと大好きなんだから」
まあ、俺の方が負けてねえけどな?
なんて付け足して扉を開けにいけば、そこから俺の体に吸い込まれるようにして、愛しい少女が飛び付いてきた。
受け止めきれずに床に押し倒されるような形になりはしたが、上体を起こして、俺の胸で泣きじゃくるそいつをしっかり抱きしめて撫でてやる。
「いい友達作ったじゃねえか…蝶」