第23章 知らなかったこと
今太宰さんの所属している組織こと、武装探偵社。
軍や警察が手に負えないような荒事を解決するための、いわゆる人助けの仕事。
織田作が喜びそうな仕事。
私が外に出ていない間に設立されたらしく、構成員は異能力者が殆どなんだとか。
「…怒ってるかい。私が一人で出ていったこと…私は後悔しかなかったよ」
『…でも…覚えててくれた、から』
「…」
離れようとしない私のこのわけを、きっと彼は…私自身よりももっと深くまで分かっている。
それでも離さないでいてくれるのは、私と彼との間に確かにまだ繋がりがあったからなのだろうか。
「蝶ちゃん…どこか、行きたいところや…住みたいところはあるかい?何でも実現するよ、君のためなら」
『…太宰さんといれるなら、いいです……それ以外にもう…わかりません』
「……そうかい。それなら、一つ提案がある…順序が逆になってしまったうえに、三年半もかかってしまったけれど……____探偵社に、入らないかい」
この世界に来てから、こう言われたのは初めてだった。
ポートマフィアに入ったのだって、脅されて…私の意思なんて関係なくて。
結果的に中也さんに怒られて…いや、このことはもう忘れよう。
『私じゃ、務まりません…人を助けることなんて、していい人間じゃありません』
「何を言うんだい…この私が、こうして働いているのだよ…?」
穏やかな声色で言うその言葉は、すうっと私の中に入ってくる。
この人のしていた仕事のことを私ほどに知る人物は、経歴以外には森さんくらいのものだろう。
だからこそ、彼は私に言うのだ。
「君の人は私がよく分かっている…それに、仕事の理由だって。元々君は、誰かを守るために始めたことだったろう?」
あえて名前を言わないでいてくれたのは、彼なりの優しさだろうか。
本当に救われる…
「社長は君が眠っている内に社に戻ってきてね?説明してみたら、なぜかは分からないが…少し興味を持っていそうだったよ」
『…いい、人…?』
「!…うん、すごく」
この人が言うなら、信じられる気がする。
だって、今の私には何も無い…この人以外には、何も。
なんて、決意を固めた束の間のこと。
「たっだい…あれぇ??君、どこかで………ああ!!!おもいだした!蝶ちゃんじゃないの?白石蝶ちゃん!!!飴いる??」
『へ…?…!!』
「え…?何…??」