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第23章 知らなかったこと


話しているうちに分かったのは、思いもしていなかったほどにあなたが繊細で、怖がりな女性であったこと。
大人にみせているのはただの強がりで、怖がりな自分を守るためであったこと。
そして、本当はなんでも知っているようにみえて、何も知らなかったこと。

複雑ではありますが、それらを総じてあなたは本当はまだまだただの子供なのだろう、という考えを抱きました。

しかしそれでも、ただの子供ではなく成熟している部分もあり、やはり自分の心を惑わせてやまなかった。
ただ、あなたに少しでもここは怖くない世界なのだと、思っているよりももっと生きやすい世界なのだと知ってほしかった。

そしてそれを伝えていくうちに、あなたの人を知るうちに、更にあなたを愛しく思うようになっていました。

兄のような存在であればよかったのにとあなたに言われたその時から、あなたのためにならばとそう務めるように見て見ぬふりをしていたのですが、それももうできそうにありません。

自分は最初から、あなたの思うような存在のままではいられなかったのです。
もっと特別な、ただ一人の男としてあなたの傍にいたいと思ってしまっていたのです。

しかし、自分と同じような思いをあなたも抱えているのだろうということは見ていてすぐに分かりました。
そしてそれで苦しんだり葛藤したりして、いつも不安なあなたの支えになりたいと、また思うようになりました。

何も伝えずに傍にいた自分を、もしもあなたの苦にならないのであれば、許して欲しいです。
そしてこのような形でしか伝えることができなくて、またあなたを一番に悲しませてしまうであろうこのような形の別れとなってしまったことを、どうか許して欲しいです。

それから何よりも、自分を責めないようにしてください。
自分がいなくなってしまったことを、あなたが責任を感じないようにしてください。

自分の何の変哲もない日常を照らしてくれた、愛しいと思える大切な存在になってくれたあなたに、感謝の気持ちしかないのです。

ありがとう、こんな自分といてくれて。
ありがとう、自分に愛情を教えてくれて。
ありがとう、自分と出逢ってくれて。
そしてありがとう、生まれてきてくれて、生きていてくれて。

少しあなたよりも先に、あなたの故郷で待っています。
自分の想いに、いつか返事を聞かせてくれるのを、いつまででも待っています。
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