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第23章 知らなかったこと


全ては異能開業許可書を巡って起こってしまったことだった。
そしてそれを引き起こしたのは、組織の首領であるわけなのだが。

計画を練られていたはずだった…しかしタイミングが悪かった。
恐らくそういうことだ。

だって、私がもしもその場にいたのなら…彼を絶対に手放しはしなかったもの。
手放す勇気なんてもう忘れてしまったもの。

あなたが私をこうさせたのに。
全部全部さらけ出して…さらけ出させておいて、また私一人おいていっちゃうなんて。

私が受け取ったもうひとつの鍵…それに対応する鍵穴を探していると、丁度彼のデスクの引き出しに一箇所、それらしき鍵穴があった。
試しにそこにさしこんでみると見事にぴったりと鍵ははまり、回せば中の鍵が開く。

そこを開いて出てきたものは…

『……箱…?…手、紙……?』

両手のひらに乗るような小ぶりな箱に、白石蝶様と宛てられた手紙の封筒が入っていた。
それ以外には何もなく、彼が私に遺したものなのだと知る。

どこか縋るような思いで…彼からの言葉を求めるように、封を開ける。
ペーパーナイフで慎重に開ければ、その中からは何枚かの便箋が取り出せた。

____白石 澪様

なんて宛てられた名前に、胸の奥を握り潰されたような気さえした。
何よ、こんな時になって…こんなところで、またそう呼ぶなんて。

読んでいくと、最初の方には彼のあたっていた任務のことが綴られていた。
…うん、知ってる。
全部調べた…手荒な手を使ってでも、洗いざらい聞いたから。

____この手紙をあなたが読んでいるのなら、恐らく自分はそこにはいないのだろう。

手紙を私に書いたのは、私と会えなかったから…心残りがそこだったから。
伝えたいことが、あったから。

そこまで読んで、そこから先を読むのが怖くなった。
彼は私を理解して…しかし私はどうだっただろうかと、思ってしまったから。

恐る恐る読み進めていくと、私と初めて出会った日の事から触れられていて、考えもしていなかったような言葉を次々に目にすることになる。

____

自分は初めてあなたを目にした時、ただ素直に、美しいと感動した。
体が動かなくなってしまうような衝撃に見舞われて、声も出せなくなるほどの。
そしてその時、本当は気が付いてしまっていた。
自分のその気持ちは、あなたに心を奪われてしまったものであったのだと。
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