第23章 知らなかったこと
『中也さん、なんでそんなにこっち見てくれないの…?』
「ああ!?見てるぞ!?」
『目合わない…折角一緒に寝に戻ってきたのに…』
気が付いたら夜になっていて、少し遠征先で状況を整理し、ある程度のトラップを撒いて戻ってきた。
のだけれど、心なしかずっと中也さんの顔が赤い。
そしてずっと目を合わせてくれない。
「……お前、その…織田とは…?」
『!織田作??織田作が何か言ってた…?』
「い、いや何も…そ、そうか、織田作な?おう……蝶、俺に抱きつくの好きか?」
『へ…』
「頭撫でられんのは…俺が抱きしめんのは?あと、なんなら額やら頬やらにキスすんのは『はわわわわ…!!!?』!?」
唐突な問いに頭が回らなくなった。
恥ずかしさが先をいきすぎて戻ってこない。
『ち、ちちち中也さんが…そんな…っ!?…そ、そんなこと…頼めな…は、恥ずかしくて死んじゃう…ッ』
「…死なねえだろそんなんで……言ってくれりゃあもっとしてやれんだから…」
何かに納得したのか、中也さんの手が私を更に引き寄せる。
ベッドでそうされると、なんだかいつもよりも近いような…
そしてそこから頭や頬、背中と、落ち着くまで撫でられて…しっかり抱きしめられて。
あれ、こんなこと最近あったような…?
少し前に…そして、まだここへ来たばかりの頃に。
私がそのことを思い出したのは、丁度自分の長期任務を終えて、拠点の方へ顔を出す余裕が生まれてからのことだった。
そして私は、そのぬくもりをその日に思い出せなかったことを…言葉にして何かを伝えられなかったことを、永く後悔することになる。