第23章 知らなかったこと
「あ、おかえり!ねえねえ、写真でも撮らないかい?」
「写真…?誰が?」
「勿論、私たち四人で♪」
『私も…?』
当たり前、と太宰さんはニコリと微笑みかける。
写真…写真か。
『…私、そんなの撮るのここに来て初めてかもしれない』
「えっ、中也に撮られたり…一緒に撮ったりしたことは!?あいつならてっきり蝶ちゃんから鬱陶しがられるほどにはしてるかと…」
『そんなことない…』
「……いや、よく考えてもみろ…白石に対してそんな度胸、あると思うか?あの親バカが」
「「ああ…」」
今のは私にも言ったのだろうか。
私を安心させるように、背中を彼の手が撫でる。
『…どういうこと?』
「好きすぎて写真を撮り始めると止まらなくなって、お前からうざがられてしまうかもしれないと考えてるだろうなってことだ」
『好きすぎ、…!!!』
ぼふっ、と音を立てて顔から湯気が出る。
それになんだか余計にクラクラしてきて、動揺を抑え込むために目に付いた水を手元に移動させ、一気にそれを流し込んだ。
『ん…、ぐ…っ』
「ん?…って、おい待てお前!!それ酒じゃ…」
「え…!?織田作のやつじゃないかそれ!!蝶ちゃん、それ度数高いから飲んじゃ___」
『………ふぇ…?』
「「「…」」」
体が火照って仕方がない。
あれ、私何してたんだっけ…そういえば、なんだか心地いいような。
『…!…さくのすけ…っ♪』
「う゛、…ッ」
「織田作さんんん!!!?戻ってきてください!!!可愛いの分かりますけど戻ってきてください、許しませんよ!?羨ましい!!」
『ねぇねぇ、なでなでもう終わり…?もうしないの?』
「す、する…してやるから抱きつか……ああ、分かった好きなだけ好きなようにしてくれてていいもう、だからそんな泣きそうな顔をするな蝶」
ぱああ、と表情が輝いた気がする。
それに合わせて作之助はまたいっぱい撫でてくれて、そんなことにも気を良くして。
「これ後で現像して中也に全部送り付けとこ」
「太宰君、君嫌がらせのために写真なんてまた…」
『…今日はこれだけ?抱っこ無し…?』
「…」
言えば、少し強くなる腕の力。
ぎゅうっとされて、あたたかい。
「いいよ織田作、もっといこうもっと」
『今日はしないの??』
「おい、誤解が生まれるからその言い方は……はあ…」
「「…」」
