第23章 知らなかったこと
「お前、本当好きだよな?…さんきゅ」
『中也さんいつもそう言う…』
「…そんなに好きなら全部食えばいいのによと思っ…あああ拗ねんな拗ねんな、悪かったよ」
『またそればっかり』
一緒に甘いものを食べてればすぐこれだ。
全部食べてしまえばいいのにと言いかける彼に向かって不機嫌そうに頬を膨らませると、すぐに彼は焦って「半分下さい」と口にする。
そしてそれにすぐにまた機嫌をよくして、ケーキの乗ったお皿を差し出す。
『中也さんが食べないなら蝶食べない』
「意地でも付き合ってやりますよ…おかげでだいぶ耐性ついてきたぞこちとら」
『…中也さんはどれが一番好き?』
「またそれかよ?…俺は、お前が一番美味そうな顔するケーキが一番好き」
そういうんじゃないんだけどな…
なんて考えても無駄なこと…なぜならこの人は本気でそうとしか考えてはいないから。
『私が一番美味しそうな顔って……えっ、どれですか』
「あ?そうだな…例えばこの中なら、この苺が大量に乗ってるやつなんか気に入ってんじゃねえのか?」
『…こ、この中以外も含めてなら?』
「お前それ俺に聞くのか?……俺の手作りって言うんだろ?どうせ」
大当たり。
当ててくれてしまうのが嬉しい。
だからたまに聞きたくなってしまうのだ、こういうことは。
『正解です…中也さんってエスパーですか?』
「ぷっ、なんだよそれ。俺はお前の…」
『……お前、の…?』
「…!い、いや、何でもない…そうだな、保護者だ保護者」
何だったのだ今の間は。
なんて聞く勇気はないのだが。
『保護者…私の保護者なんかしてて楽しいですか?』
「おう、楽しい」
『…中也さんよく頭おかしいって言われません?』
「んなこと言ってくんのお前くらいだよ、変わり者」
私のこと連れ回してる物好きがよく言う…
「そんな頭おかしい奴に懐かされちまって、かれこれ四年近く一緒にいんのはどこのどいつだっけか?俺のわがまま聞いちまって離れられねえくせに」
『中也さんが私のわがまま聞いてるの。捏造しないで』
「捏造って、お前なぁ…もう少し説得力のある照れ隠しにしろよ」
照れてないし。
慣れてなくて恥ずかしいだけだもの。
『ち、中也さんまた変な事言って…』
「ああもう、だからそんな大量にケーキ渡してきてちゃ余計に説得力ねえんだって」
