第23章 知らなかったこと
『……中也さ「ダメだ」…まだ何も言ってません』
「書類手伝わせてくれとかだろうが、どうせ」
バレてらっしゃる。
『…い、移動くらいはや「それもダメだ」お、お仕事くらい蝶できます…!』
「できるできねえは問題じゃねえんですよ特別幹部さん?ああ!?病人は寝てろ、病人は!!」
『病気じゃないです、病気してません』
「体温が三十八度超えてれば熱確定なんです、分かりますかね蝶さんは?なあ、分かるよな?あれだけ俺、風邪ひかねえようにって毎日見てたよな?」
返す言葉もございません。
いや、でも私だって好きでこうなってるわけじゃ…
『……体温計がおかしかったの』
「馬鹿なこと言ってねえで寝てろ」
『だ、だって私が風邪なんかひける身体なはずな「だってもクソも、ひいてんだよ今」…能力使えば熱なんか…っ』
首領の元へと連れて行かれて、熱を計らされればこうなった。
すぐさま中也さんの執務室に手看病態勢が整わされ、そのまま仮眠用の(少し以前よりも大きくなった)ベッドに横にされる。
それからというもの。
「…何度試しても使えないんだろ?今」
『!……で、きます…もん…ちょっと、だけ集中力が足りないだけ…で』
能力を使って、熱なんかすぐに誰かに移してしまえばいい…はずだった。
中也さんに試しに移してみろと説得されたものの、私が能力をうまく扱えずにあえなく失敗するばかり。
こんなに無能だったっけ、私って…ここまで何も出来ない子だったっけ。
「熱あるんだから当たり前だろそんなもん、落ち込むなよ…おかげで今日もお前にずっとついててやれるんだぜ?俺」
『…』
中也さんは任務が大好きなのに…分かってるのに。
そばにいてくれるのが、心底嬉しくてたまらない私がいる。
…嫌な奴。
「…まぁた何か考え込んでるだろ……よし、じゃあ蝶が寝付くまで俺も横になる」
『…………え?…っ!?え、っ…中也さ…!?』
宣言通りにベッドに入ってくる中也さん。
無理矢理異能を使ってまで私に腕枕をして、話さないというように背中に腕を回して捕まえられる。
「なんならこのまま好きなだけ寝ちまおう」
逆に寝られる気がしないのですが。
『あ…あう…ッ、…ち、中也さんに移っちゃ「そん時ゃ蝶が看病してくれるだろ?」!!…は、い……』
そう言われてなんだか少しだけ嬉しかったのは、私だけの秘密。
