第23章 知らなかったこと
執務室お花畑騒動の最中のこと。
「最初に比べるとだいぶ食えるようになってきたよなと思ったら……無理しすぎ」
食堂で朝食を摂って、それから。
目の前では何もしでかさなかったのに、私が一旦席を外して戻ってきた瞬間に見抜かれた。
『…無理とかしてませ「じゃあなんでそんな顔色悪ぃんだよ?…戻しちまったんじゃねえの」……』
おかしい、戻すまでに至ったことは、まだなかったはずなのに。
鬼の中也さんといえども、流石にそこまでは強要しない。
それに、私の食事量を管理するためにも一緒に食事をしているはずなのに。
量を増やしたわけでもないはずなのに。
「……いつもよりも食欲、無いか?」
目の前に座って問われたことに、首を横に振って返す。
普段から食欲があるわけでも、抵抗がないわけではないのは確かだ…しかし、こんなことになるなんて思わなかった。
「…身体の調子がおかしいと少しでも感じたら教えるんだぞ?いいな?」
『え…?調子、って…』
「人間誰しも体調悪くなる時だってあるんだから…普段と変わりなくて食えねえってんなら、その辺も頭に入れといた方がいいだろ」
『……そ…です、か』
私が曖昧な反応を見せると、彼は首を傾げる。
けれどやはり分からない…慣れていない。
こういう関わりからは、いつも自分から縁を切ってきていたから。
「…今日は任務無し。お前も、俺も」
『!えっ、ちょ…それは…』
「たまにはいいだろ、そんな日があっても。原因だけでもせめてはっきりさせねえと…首領に診てもらった方がいい」
食事の様子から話が飛躍しすぎではないだろうか。
ほら、行こうと中也さんが立ち上がって、私に手をさしだす。
そうされると一緒に行きたくなるような習慣がついてしまったこの身体は、その手に逆らう術を持ち合わせてはいない。
『…なんともないの…に……ッ、…?』
一瞬、グラついた視界。
彼に立たされるように立つことになったからか、妙に体の融通が利かない。
おかしいな、こんな感覚になることがまたあるなんて…何かあったっけ。
私の身体でこうなることなんて、普通はありえないはずなのに。
『……、…っ…!…ち、中也さん?…どうかされまし…た…?』
「…少しじっとしてろ」
『っ、ン……、!?…ふえ…!!?』
くっつけられる額と額。
何この状況。
「……熱いじゃねえか」
