第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
「まあこんな事があった後だから、手前には話しといてやる。あいつが今ポートマフィアに所属してねえ理由だが…言っちまえばそれは、お前の言う通りあいつがドジを踏んだからだ」
「え、でも当時、噂の特別幹部って役職に就いてたんすよね?ドジを踏んだくらいでポートマフィアから追放されますか?今回だって首領の命令で…」
「ああ、そうか、手前にはそっから説明しなくちゃなんねえな」
立原は恐らく、蝶がドジを踏んだと聞いて、あいつがマフィアを追い出されたと思ったんだろう。
「俺はあいつがドジを踏んだと言ったが、それは蝶本人がそう思ってるだけで、あいつがマフィアを離れる事になった原因は周りにあるんだよ」
蝶の体質の事、そしてそれを目当てにした人体実験の事。
俺自身が調べた事と蝶本人から聞いた事を、全て立原に話す。
こいつだって悪い奴じゃねえし、知ってれば何かあった時力を貸してくれるかもしれねえ。
俺があいつを見つけるまでの事と、四年前にあいつが攫われ、三年半の間またそんな生活を送っていたという事。
それを理解し、頭を整理させて、立原は顔色を段々と悪くする。
「あんなちっせえ女が…?じゃあ、幹部があいつといなかった間、ずっと一人で耐えてたって事っすか」
「ああ、そうだ。だから人前じゃ子供になりきれねえし、かといって本当に心の底から子供じゃないわけじゃない。俺や広津さんや首領からしてみれば俺達のせいでそうなったようなものなんだが、蝶は自分の勝手な行動でそうなったって思ってんだよ」
立原から…思いもよらぬ人物から核心を突かれて、考え込んだ結果、全てを放棄してしまおうとしたのだろう。
他人の前で素直になれず、その上弱みを見せたがらず、俺の前でじゃなけりゃ子供になれない蝶だからこそ。
「だからこそ、本人の思う本当のことを指摘されて、馬鹿な事考えやがったんだよ。」
「………俺、すっげえ今自分が恥ずかしいっす。幹部が間に合っていなかったら、俺みたいな何も知らねえやつのせいでっ、」
「言うな。それ以上言ったら、俺は手前に手が出るかもしれねえ」
無理矢理立原を黙らせた。
大人気ねえなんて分かってるが、その実本当に間に合ってなかったら、俺はこいつを殺していたかもしれねえ。
「…さっき蝶が手前にだけ何も聞かせたがらなかったのは、この件で手前がしけた面になんのを考えてのことだ」