第23章 知らなかったこと
「どれがいいのやら…蝶、好きなデザインのもんどれだ?」
何やら中也さんが贔屓にしているブランドらしく、彼は私の髪に付ける飾りを探してくれているよう。
…いいって言ったのに。
『…そんな、気を使わなく…て、も……』
目を奪われた“それ”は、ヘアアクセでも煌びやかな装飾でもなくて。
____ただ、“形”が欲しかった____
____自由になんか、してくれなくても構わないから____
目にしたそれには、ほかのアクセサリとは違う…私情も入り交じってしまうような、特別な意味さえ持たせる事ができる。
ただ、自分の口からそれを伝える勇気なんか私には無い。
____けれど、もしも彼がそれでもいいと言ってくれたら…?____
結婚してるわけでも、そういう関係なわけでもないのに…ずるい奴。
悪い考えを消し去るようにして見るのをやめる。
『…中也、さん……やっぱり帰…?中也さ…ッ?』
「…これ?」
手を引かれて、たどり着いたのはそのコーナー。
手に取られたのは、私が見ないようにしようとしたそれ。
『な、にを…え、だってそれ…そんな……』
「いい趣味してるじゃねえの…これなら、俺でも付けれるな」
『へ…?』
手に取って出されたそれは、私は気づいていなかったけれど…明らかに、“ペア”になるよう作られていて。
「…宝石付きとか、ゴールド入ってるやつじゃなくていいのか?…シンプルだしいいとは思うが、好きなデザインでも『…は…』ん?」
『…ち、…中也、さんは…なん、で…』
「……俺も、お前のもんだって言い張りてぇんだよ」
『!?…っ、…そ、れで…ペア、の…?』
「おう、その方がいい……“指輪”を提案して引かれたらどうしようかと思ってたけど、お前がいいんなら」
『………中也さんも気に入ったなら、それ』
今度は私が驚かれる番だった。
もっと女らしいものや、可愛らしい物もあると。
それでも、確かに中也さんが目を付けたものだったはずだから。
「…んじゃ…これ……で、ほんとにいいのか?…指輪、だぞ?」
『いい…中也さんのになれるなら、喜んで』
「……他に好きな奴できても知らねえからな」
出来ないよ…だって、もうとっくに私は貴方のものだもの。
お互いのリングと私用にチェーンまで揃えて、私にはまだまだ大きかったから、チェーンに通して首に付けてもらった。
