第23章 知らなかったこと
気づかれた…私が、何に怯えていたか。
「いつもお前は“そこ”を気にしちまうから……それに、他の誰かに気ぃ使っちまうと素直になれないだろ」
『…わ、たしが…弱いから…』
「お前は弱くなんかない。…立派なもんだ、そんな風に耐えて闘ってたんだから」
零された言葉にえ、と声を漏らす。
「それに、ちゃんと俺のこと呼んでくれただろ?…今もこうやって、俺のこと頼ってくれてる……弱くなんかないさ。そこまで強くないだけだ…前にも言わなかったか?蝶は“女の子”なんだ」
『!…、っ…ちゅ…や、さ……』
「…知ってる、分かってる。…寂しがらせてたのも、それでも俺のこと…いつもすごいいい子にして待っててくれてるのも。我慢してるのを気付かせないように我慢してるのも」
ありがとうが…大好きが、溢れて止まない。
私が思っている以上に、この人は私を見ててくれていた…知ってくれていた。
大事に、してくれていた。
そんなところまで、教えてなんてくれなかった…いや、私が気付かなかった。
『……いっそのこと、中也さんの所有物にでもなれたらいいのに』
「ばか…んなことできっかよ、折角自由にしてやれたのに」
『…そしたら…何か、言い返せるかなって……そ、したら…何、か…っ』
形になるかなって。
言葉にできるように、なるかなって。
「…お前は俺のもので…俺は、お前のものだろう?」
『……それは、…中也さんにしか、言えない…です』
「じゃあ俺が言う…お前は俺のもんだからって。俺が、二度とこんな馬鹿な真似する奴が現れねえように分からせてやる」
どういうことだろう…言うといっても、それだけで納得するようなものなのだろうか。
「あ、さては疑ってんだろお前?…街に出んぞ」
『え…っ、こんな時間から出「今日はいい、緊急事態だ。蝶の事が優先」そ、そんなこ…っ!?』
有無を言わさぬように横抱きにされれば、そのまま小走りで外にまで…
すれ違う人達に驚かれはしたけれど、それより何より、彼の手に抱えられているのに酷く安心感を覚えた。
大事、なんて…言われていた意味が、今ひしひしと伝わってくる。
街に出たら背中に背負われる形になって、そのまま色々なショーウィンドウの前を通っていく。
「……!あったあった…」
その中で中也さんが探していたと言うように入っていったのは…アクセサリーショップ。
