第23章 知らなかったこと
「…そのまま引きちぎってやってもいいのだぞ、そんな体…再生能力者とはいえ、体をそこまで千切られてしまえば……どうなると思う?」
言われなくても想像がついた…否、身体が覚えていた。
『ちゅ……さ…っ、……や、…い、や……ッ……や、さ…』
「!!この期に及んでその言葉しか出ぬとは…笑止!!!見下げ果てた腑抜けだったか!!!!」
『や、…だ…ッ……ごめ…ん、なさ…っ………ちゅ、うや……さ…っ』
助けて…
初めて、縋った。
違う世界に来てからこんな状況で、初めて、こんな言葉を口にした。
けれど、口にしてしまうほどには…私は彼に、心の奥深くまで、暖かくほぐされてしまっていた。
『た、す……け………』
「…予定変更だ、貴様が抵抗する気になるまで、僕の攻撃を続け____」
_______誰に攻撃を続けるって…?
「!!!!?…っ、が…ッ!!!?あ、っっ!!!!」
消えてしまった黒獣。
歯型に合わせて空いた穴…足元を見ると、赤しかなくて。
『ごめ……ん、な…さ…ッ…』
「蝶」
『や…っ、も、もうや「蝶…っ」!!…あ……、れ…?…え…あ…中也、さ……おかえりなさ…い…』
うまく、笑えていただろうか。
「…馬鹿、野郎……なんで抵抗、しねえんだよ…お前なら、いくらでも対抗できた、だろ…ッ、?」
外された枷。
それに腰が抜けて、崩れ落ちる。
『あ…だ、いじょぶ……で、す…そんなこと、より中也さんが…かえって、きて………蝶、嬉し、から…』
また泣きそうな顔になって、私の背中に優しく触れる。
ビクリと一々身体が跳ねる…ダメ、こんなことじゃ。
『…ごめんなさ……だいじょ…「嘘、吐かなくていい…から…ッ」……で、も…』
「俺に助けを求めるくらいに怖かったんだろ!!?…っ、なあ、蝶…頼むから…そんな風に、無理して笑わないでくれ…!!」
『あ…ぁ…っ、だ、って……だって、これ以、上……悪い子になっ、ちゃ……ちゅ、うやさんと…約束した…のに…ッ…?』
「!!!!…約束、思い出せよ蝶……俺が戻ったら…?」
『……、ぁ…、あ…ぅ、…ッ?…ごめ…「謝るな…何も悪くない。…お前の思う悪い子は、全然悪い子なんかじゃない…もっと騒いでいい、我慢しなくていい。もっと…頼ってくれていい」あ、…っ…中也、さん……中也さ…ん…っ』
そんな風に言わないで。
我慢できなくなる
