第23章 知らなかったこと
「一つ…貴様、どこの出だ?」
『……どこ、って…』
「どのようにして取り入った?…貴様のような、媚びへつらうその表情……普通の人間が身に付けるような技術ではない。何を企んでいる」
『な、にも…企んでな「嘘を吐け、それならどうしてそんな年の人間が、そのような技術を持っている……殺しの技術を」…』
言えない…言いたくない。
こんなこと。
嘘なんて、吐いてない。
だけど相手は、恐らくそれを言っても信じてくれるような相手じゃない。
「…白状しないなら確かめるまで。……僕の黒獣はあらゆるものを喰いちぎる」
『……!』
頬を掠った黒獣…と呼ばれた黒い刃。
流れた血が、嫌なことを彷彿とさせる。
動揺して、パニックにだってなりかけた…それでも、それで取り乱すわけにはいかなかった。
約束したから。
いい子にするって…“いい子”でいるって。
「!…ほう、再生系の異能力か」
『!!…や、…っ……ご、め…なさ…ッ』
「謝罪をするくらいなら質問に答えよ…今度は腕を切るぞ」
『ひ、っ…』
「…このような軟弱者を、どうしてあの人は…!!」
軟弱者…そう言われたって仕方がない。
だって、どうしようもないんだもの。
こんな状況で、いい子でいるなんて…謝ること以外に、方法が思いつかないんだもの。
感覚だって…どうなっているかだって、全部全部知ってるから。
「早く質問に答えよ!!!…っ、何の目的だ!!何が狙いで『あ、…っ、……ご…め…』……僕、約束は守る…!!」
焼けるような感触。
刃の感触が無くなってから、少し間をあけて知っている痛みがやってきた。
『あああ…ッ、あ……っ!!!…っ、あ…や、ッ…やめ…あ…、は…ッ』
「泣くことしか出来んか…生ぬるい場所で生易しく育てられてきた貴様にはそれが限界か」
相手の声だってまともに聞けやしない。
だって、“ここ”は怖いから。
痛いことしか、分からないから。
それでも、これ以上悪い子になっちゃいけないから。
「…再生スピードは早いらしい」
『ふ…ぁ、…ッ……や、め…っ』
「……やめて欲しくば抵抗の一つでもしてみればどうなのだ」
『……ッ、〜〜〜〜〜!!!?…っ、ぁ…あ…!!!!!』
悲鳴にさえ、ならなかった。
黒獣…目の前の相手の言う私の体には大きいそれに、お腹から胸にかけて……噛み付かれた。