第23章 知らなかったこと
「それで、こっちに執務室を設けようと思……蝶ちゃん?」
『ひぇ…ッ!?』
「…ここ、蝶ちゃんの執務室にしようと思うのだけど…どう?」
『し、しし執務室も何も…いや、その…私…執務室とか「いるでしょ、幹部なのだから」……で、も…』
森さん…否、首領に連れられて案内されたのは、広めの書斎のような場所。
…執務室なんて。
中也さんの手を握ったまま案内されたのはいいものの、私にはやはりまだ頭が追いつかない。
それでちらりと中也さんの方を伺ってみるのにも関わらず、その肝心の中也さんはというと…
「俺が来てよかったんですか?ここ…」
「どうせよく来ることになるだろうと思って」
という調子で冷静に質問するばかり。
少し妬ける…私の考えなんか絶対想像もしてないんだろうな、この人は。
「それに、蝶ちゃんと君はちゃんと情報を共有していてくれないと、いざって時に一番に駆けつけられな……蝶ちゃん?どうしたの、そんなにほっぺた膨らませて」
『!?ふ、っ…膨らませてないです!!』
「ものすごく何か言いたそうだけど………もしかして執務室移るの、嫌?」
『うぐ…っ』
「えっ」
図星をさされて変な声が出た。
それと一緒に中也さんにこちらを見られてしまい、更に後にひけなくなる。
「…分かりやすいねえ、中也君に甘えてる時の君は」
『へぁ…!?あ、甘え…っ、え…え…!?』
「いいよいいよ、君の意見を尊重しよう…で、執務室はどこがいい?……こっちの勝手で役職に就いてもらうんだ、それくらいのわがまま言っていいよ!」
首領からの思いもよらぬ提案に目を丸くする。
それから、思わず恥ずかしさに…中也さんの背中に身を隠した。
「蝶!?えっ、なんでお前後に隠れ…、お、おい!?」
『……べ、つに…い、いです…どこでも、その…』
「………そうかい…それじゃあ中也君に決めてもらおっか♪」
「俺ですか!!?えっ、蝶がこっちに執務室移ることになってたんじゃ………って、なんでそんな不機嫌そうになるんだよお前!?」
『…別に…なんでも』
嫌だという思いが伝わってしまったらしい。
私としたことが、らしくない。
「…いいのかい中也君?そうなると、これまでみたいに四六時中蝶ちゃんと一緒にいるということは難しくなるのだよ?」
「な…、っ…!!……ああ!?お前まさかそれで!!?」